ラルブル・ブラン(白い樹) 2019 フランス、モンペリエ 撮影:イワン・バーン
建築家・藤本壮介の大規模個展「藤本壮介の建築:原初・未来・森」が、東京・六本木の森美術館で開催される。会期は7月2日から11月9日まで。
1971年、北海道生まれの藤本壮介は、東京とパリ、深センに設計事務所を構え、個人住宅から大学、商業施設、ホテル、複合施設まで、世界各地で様々なプリジェクトを展開。2000年の《青森県立美術館設計競技案》で注目を集め、以降も《武蔵野美術大学美術館・図書館》(2010年、東京)、《サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013》(ロンドン)、集合住宅《ラルブル・ブラン(白い樹)》(2019年、フランス、モンペリエ)、音楽複合施設《ハンガリー音楽の家》(2021年、ブダペスト)などのプロジェクトを完成させている。現在は、「2025年大阪・関西万博」の会場デザインプロデューサーも務める。
藤本にとって初の大規模個展となる本展では、活動初期から世界各地で現在進行中のプロジェクトまでを網羅的に紹介し、四半世紀におよぶ藤本の歩みや建築的特徴、思想を概観するもの。展覧会タイトルの「原初・未来・森」には、「森」という概念が藤本の活動初期からひとつの核になっており、この概念が未来の建築や社会のモデルになるとの自身の考えからつけられているという。
展示作品には、従来の建築展で中心となっていた模型や設計図面、竣工写真だけでなく、空間を体験できる大型模型、プロトタイプ、インスタレーション、映像を投影する模型なども含まれ、現代美術館ならではの建築展のあり方を模索する。
会場には、活動初期から現在計画中のものまで藤本のすべてのプロジェクトをひとつの「森」として表現した大型インスタレーション《模型の森》や、《安中環境アートフォーラム》(2004年計画案、群馬)、《エコール・ポリテクニーク・ラーニングセンター》(2024年、フランス、サクレー)などの建築模型にプロジェクターで人の動きを投影する展示、藤本が手がけた複数の建築作品が擬人化され、それらが会話を交わすという設定の作品などが登場。
また万博会場のシンボルであり、世界最大級の木造建築物となる「大屋根リング」の5分の1部分模型を、本作の構想段階から完成に至るまでの資料とともに展示し、その歩みや議論を振り返る。
さらに2031年度竣工・開館予定の《国際センター駅北地区複合施設》(仮称、仙台)のプロジェクトの全貌を、大型模型などを通して紹介するほか、間(あわい)をコンセプトに、藤本の著作や本展コラボレーターの幅允孝(ブックディレクター、有限会社バッハ代表)が選書した関連書籍が並ぶブックラウンジも設置される。
いまもっとも注目される日本人建築家のひとりである藤本。大阪・関西万博とも会期が重なる本展は、幅広い展示品と独自の展示方法によって、その活動の全貌や思想に触れるとともに、都市や建築の未来について考えるきっかけを得られるタイムリーな機会になりそうだ。