今年で2回目を数える資生堂ギャラリーによる新人作家の公募展が開催中だ。去年も底力を感じさせる作家のセレクションだっただけに、期待が膨らむ。今年は357件の応募の中から3人が選ばれた。
展覧会の一人目は、窪田美樹(1月11日~2月3日)。壁に留まったり、あるいは横たわった造形は、蝶や虫、または抽象的な身体のかたちを思わせる。木製家具を切断し、その表面を研磨、パテで隙間を埋めて滑らかな表面に仕上げられた作品で、「家具だった」と言われなければ分からない姿に変容しているが、そこには、もともとの家具としての機能を逸脱した、伸びやかな素材としての喜びさえ感じられる。そして、家具を切断したものだと聞いたとき、それらの家具がそれまで包み込んできた時間、使い手の思い出といったものが香り立つ。反対に、透明ビニールシートに接着剤で造形を描いた近作は、描き出したかったモチーフが、接着剤という本来の役割を果たすために押しつぶされ、歪められた様を想わせる。
「切断」「断面」という言葉から、動物を輪切りにしたデミアン・ハーストの作品を連想した。しかし、窪田の作品は、普段は見えない生々しい内部を見せる行為というよりも、家具という機能に依った我々の固定観念を解き放ち、思考と想像力を刺激する。
資生堂ギャラリーでの展示は終了してしまったが、3月13日より表参道のhpgrp GALLERY東京で開催されるグループ展「無題/UNTITLED」や、5月に六本木の旧住宅展示場でTABlogの橋本によりキュレーションされる企画展「The House-気配の部屋-」でもその作品に触れることができる。
しかしこの不思議な光景は、いくら描写しようとしたところで伝わらない気がする。この非現実的な空間を体験するには、これはもう実際に足を運ぶしかない。日常生活で身近に接する既製品や、自身の行為といった身近な事柄をテーマにしたインスタレーションを制作してきたという槙原。これまではいったいどのような作品を創作してきたのだろうかと気になって、ポートフォリオを手に取る。そこに紹介されているのは、たとえば、建築現場の足場がプラスチックのミニキットになった《Scaffolding》(2006)という作品や、実際に実物の足場を建物の屋内に組んでみた作品《Bakery dummy》(2007)や、昔の銀行の金庫内に展示された巨大なパン《gain》 (2007)のインスタレーションなど。いずれも我々の固定観念をくらっとさせるような、大掛かりで大まじめなコンセプチュアルアートに、本物のアーティストのセンスを嗅ぎ取った。3月7日からは彦坂敏昭の展示が始まる。