20世紀の日本を誇る版画家といっても過言ではない、棟方志功(1903〜1975)。棟方の暮らした土地である青森、東京、富山を巡る大回顧展「生誕 120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」が、東京国立近代美術館で始まった。青森、東京、富山は、棟方志功が芸術家として大成していく過程のなかで、大きな影響を与えた3つの地域である。
棟方は、仏教を取り扱った作品でも広く知られており、ヴェネチア・ビエンナーレでの受賞をはじめ、「世界のムナカタ」として国際的な評価を得ている。板画(自作木版画の呼称)、倭画(自作肉筆画の呼称)、油画といった様々な領域を横断しながら、本の装幀や挿絵、包装紙などの商業デザイン、映画・テレビ・ラジオ出演にいたるまで時代特有の「メディア」を縦横無尽に駆け抜けた、棟方の多岐にわたる活動を紹介する。
「華狩頌」や「二菩薩釈迦十大弟子」などの代表作に加え、約60年ぶりの展示となる約3mの巨大な屏風「幾利壽當頌耶蘇十二使徒屛風」、ほとんど寺外で公開されることのなかった倭画の名作「華厳松」などの作品は見逃せない。高い人気を博した本の装幀や、長く大衆に愛された包装紙の図案などからは、優れたデザイナーとしての一面が垣間見れるだろう。
手がけた板画は、掌サイズの絵葉書から公共の建築空間の大壁画まで幅広い。板画の可能性を広げ、様々なメディアを通じて「世界のムナカタ」が社会現象になるまでの道程─「メイキング・オブ・ムナカタ」を辿ってみよう。