2021年に第74回カンヌ国際映画祭にて『MEMORIA メモリア』が審査員賞を受賞し、映画監督、アーティストとして唯一無二の存在感を示すアピチャッポン・ウィーラセタクンの個展「Solarium」が、SCAI THE BATHHOUSEにて開催される。会期は3月16日~5月25日。SCAI THE BATHHOUSEでの個展は、7年ぶり5度目の開催となる。
本展のメインとなる映像作品《Solarium》は、タイ・チェンライ県で開催されている「タイランド・ビエンナーレ・チェンライ2023:開かれた世界」にて発表された新作。SCAI THE BATHHOUSEのスペースに合わせたスペシャルバーションとして展示する。
アピチャッポン・ウィーラセタクンの作品は、拡張した時間にまたたく光の効果によって、孤独な夢、近しい身内の物語や抑圧された集団の記憶など、心の片隅に追いやられた不穏な心理を予感させる。
《Solarium》は、ガラスの両面に映し出される2チャンネル映像のインスタレーション。ウィーラセタクンが幼少期に観たホラー映画「The Hollow-Eyed Ghost 」(1981)に着想を受け制作。盲目の妻を救うため、患者の眼球を盗んだ狂気の医師を描く物語を元に、暗闇の中で自身の眼球を探してさまよう男の姿が映し出されるが、太陽によって破壊されてしまう。もうひとつのスクリーンには、太陽の燦然とした輝きや、幾重にも重なる葉をすり抜ける木漏れ日など、目に見えない光の暖かさを感じるイメージが綴られる。
亡霊は、映画監督のように、いつも光を体験するための装置を探し出しています。このタイトルは、この夢のような状態から逃れられず、自ら作り出した日光浴室(ソラリウム)に永遠に閉じ込められ、日の出の暖かな光を待ち望む亡霊を暗示しているのです。(プレスリリース、作家コメントより)
本展では、新作のためのドローイングも初めて一般公開。5年間に渡る光と影の探究は、二部作ドローイングと写真を用いた立体作品として結実した。《Solarium》の映像シーンを彷彿とさせる光、影、眼球のスタディからなるモノクロームの水彩シリーズや、制作の過程で訪れた場所を記録した写真アーカイブを5部構成で編纂した立体作品《Boxes of Time》(2024)にも注目したい。