1970年代からトップモデルとして世界のモードを席巻した山口小夜子。
「着ること」をテーマに、異なるジャンルを横断するクリエーター、パフォーマーとして活躍した彼女をトリビュートした展覧会が東京都現代美術館で始まった。
パリコレ出演時の映像や、資生堂の専属モデルを務めた作品と並び、晩年には若い世代のアーティストたちとのコラボレーションを行った軌跡が展示されている。
展覧会は主に2つの構成に分かれ、ひとつは山口小夜子が資生堂ふくめトップモデルとして活躍した時代を、アーカイブ資料などを含めて振り返っている。
もうひとつの部は、生西康典&掛川康典、宇川直宏、エキソニモ、森村泰昌、山川冬樹といった生前の小夜子と縁の深かったアーティストによるインスタレーションを含めた、山口小夜子に捧げる新作作品群だ。
エキソニモ作品は、小夜子の存在をあえて当時の広告から「削除」した。さらにGoogle画像検索のディスプレイを設置しているが、そこにも小夜子は不在だ。
山口小夜子の生前、雑誌で「蒙古斑革命」という連載を共に制作していた写真家 高木由利子は、フレームに収められた山口小夜子や登場人物の写真で壁一面を埋め尽くした。写真やファックスなどのコラージュを掲載していた当時の誌面の雰囲気を再現した。
展覧会の前半では小夜子というアイコンがつくられていった様子をアーカイブ資料などとと主に振り返っているものの、後半では、むしろ亡くなったあと、その存在のまとっていた世界がいかに広範なものだったかを「不在」によって語っているようだ。山川冬樹の映像作品や、アトリウムのインスタレーションでももはや小夜子の降霊を待つような雰囲気すら感じる。生前の小夜子を知らないという世代にも、同じ時代を共有したアーティストたちを「口寄せ」として、彼女が雄弁に語りかけてくるような展覧会だ。
小夜子メイクを完成させたアーティストによるメーキャップや、ダンスメソッドを体験するワークショップも今後予定されている。Tokyo Art Beatの提供するアートイベント割引アプリ「ミューぽん」も利用可能。会期は6月28日まで。