3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震を受け、アートを通じた被災地復興・被災者支援のプロジェクトが立ち上がり始めている。
今回は、4月最初の週末に開催される二つのイベント、「SAVE TOHOKU PROJECT」と、ACT FOR JAPANチャリティーパーティーについて紹介したい。
■ 「SAVE TOHOKU PROJECT」
「SAVE TOHOKU PROJECT」を立ち上げた藤本兵馬さんは、16歳で初めてアート作品を購入してから、29歳になる現在まで約12年にわたって作品収集を続けている美術愛好家であり、コレクター。
この度の震災を受け、4月1日から3日までスパイラルガーデンで開催されるアートフェア「行商〜ギャラリー・サーカス」に 、「SAVE TOHOKU PROJECT」として1ブースを設け、作品のチャリティー展示販売を行うことになった。
出展作家はどの作家も藤本さんがこれまでの長いアートとの関わりの中で注目してきた一押しのアーティストたち(出展作家一覧については文末参照)。プロとして活躍している作家が多いので、作品の出展に当たっては作家の所属ギャラリーとの調整も図った。コレクターがギャラリーの協力を得てアートフェアにブースを出すという、おそらく初めてではないかと思われる珍しい試みだ。
「SAVE TOHOKU PROJECT」の義援金スキームでは、売れた作品の代金から作品制作にかかった費用を除いた金額が購入者名義で、また、制作費用についても作家の意志により一部もしくは全額が作家名義で同じく日本赤十字社に寄付される。購入者は、作品代金の領収書ではなく、後日日本赤十字社から購入者名義宛の領収書を受け取る形となる。作家についても同様だ。
ちなみに、アートフェアに出展するためには出展料(=ブース代)がかかるが、「SAVE TOHOKU PROJECT」については、出展料はじめ諸経費はすべて藤本さんの個人的な持ち出しによる。ただし、文末に記載のとおり出展料は経費を除いた全額が義援金となる。
つまり、経費はすべて個人負担で拠出され、売り上げはほとんどすべて寄付されることになる。
なぜそこまでやろうと思ったのか、藤本さんにその思いを尋ねたところ、
「(自分は)これまでの人生において、コンテンポラリーアートに深く感化されて来た。また、その過程で多くのアーティストとも貴重な絆を培ってきた。アートでなければできないことがあるし、アートの力を信じている。個人的には送金という形での寄付も行ったが、今回の取り組みは、自分がそれだけ恩恵を受けてきたアートを通じて行うことでより大きな意味がある」と語ってくれた。
何よりも、このような企画を立ち上げることで、アーティストに自身が持つ力を再認識し、制作を続けていってほしいというコレクター側からのメッセージが込められているという。
震災後からの短い準備期間において、アーティストと所属ギャラリーとの調整に奔走する中、チャリティーを作品販売という形をとって行う必要性を疑問視する声もあったという。しかし、藤本さんの熱意によって出展に賛同してもらうことができ、最終的に9名(3月27日時点)ものアーティストとギャラリーから協力を得る事ができた。出展される作品の中には、今回のために制作された新作もあるという。
なお、「行商〜ギャラリー・サーカス」でも、各出展画廊の利益の一部、会場に配置される募金箱、書籍販売の利益および経費を除いた出展料の全額が、日本赤十字社を通じて東北地方太平洋沖大地震の被災地へ義援金として送られる。
【SAVE TOHOKU PROJECT】
http://savetohoku.jp/
出展アーティスト(あいうえお順、敬称略)
青木美歌、岩田俊彦、上野紗代、開発好明、衣川泰典 、興梠優護、境貴雄、中村ケンゴ、矢津吉隆、吉本直子、渡辺おさむ
【行商〜ギャラリー・サーカス】
会期:4月1日(金)-3日(日) 11:00-19:00
会場:スパイラルガーデン
入場無料
http://www.tokyoartbeat.com/event/2011/733D
■ACT FOR JAPANチャリティーパーティー
また、『行商』初日の4月1日(金)の夜、月島のMUSEUM at TAMADA PROJECTSで、ACT FOR JAPANのチャリティーパーティーが開かれる。
このパーティーは、株式会社Civic Artの企画により、救援物資としては送りにくいお酒をMHDモエヘネシーディアジオ株式会社の協賛により提供し、ドリクの売り上げがすべて義援金として寄付される。
ACT FOR JAPANは、被災地支援のためにアート、デザイン、建築、ファッション関係者が立ち上げたチャリティープロジェクトの情報を取りまとめて発信するべく立ち上がった動きで、4/1のパーティーでは、各関連プロジェクトがオープンマイクの形式でプレゼンテーションを行う。また、J-Waveのパーソナリティーを務めるDJ Taroさんによるプレイやパフォーマーのライブなども予定されている。
イベントを主催した株式会社Civic Art代表の渡辺大介さんによると、「お酒を飲むのが好きな人が自粛をしないで楽しくお酒を飲み、明るい気分になる。そしてそれがそのまま被災地支援のチャリティーになるという企画を通じて、継続的な支援のあり方を提案していきたい」とのこと。
長かった寒さも和らぎ、桜もほころぶ4月。
被災地支援のために、そして仲間みんなで元気になるために、足を運んでみてはどうか。
【ACT FOR JAPANチャリティーパーティー】
会期:4月1日(金)19:00-22:30
会場:月島MUSEUM at TAMADA PROJECTS
入場料:¥1,000 ドリンク:¥500〜
http://www.tokyoartbeat.com/event/2011/0675
上記で紹介したプロジェクトを始め、今後は、アートに関連した様々なチャリティー企画が多数立ち上がってくるだろう。
支援のかたちとして、義援金や生活物資の寄付だけでなく、被災した方々の心を支えていくための方法として、様々なあり方もあるはずだ。
そのような中、どんなプロジェクトが始動しているのか知り、どの企画に参加したいのか選んでいくために、チャリティー企画の情報収集/発信方法が重要になってくる。そのような動きをまとめて発信していくプラットフォームとして「Art for LIFE」が立ち上がった。
イベントの企画者は、各自のイベント情報を登録することができ、参加者は探すことができるので、是非活用してほしい。
【ART for LIFE】
http://www.a4l.jp/
なお、寄付金についても、被災者の心の支援と被災地の復興を目的とした芸術・文化活動に特化したものもある。
一例は企業メセナ協議会が設立したファンドで、これは、芸術・文化活動を通じて被災した方々の心を励まし、また被災地の文化資源の再生・復興に向けた活動に対する支援金を募集するという内容だ。
詳しくは下記サイトよりご覧いただきたいが、アートを通じた支援の一方法として紹介したい。
【東北関東大震災 芸術・文化による復興支援ファンド】
http://arts-fukkou.blogspot.com/