「カラー写真のパイオニア」とも言われるソール・ライターの写真展「Saul Leiter」が虎ノ門のart cruise gallery by Baycrew’sで開催される。ソール・ライター財団監修のもと、新たにプリントした44点を日本で初めて展示。会期は10月25日〜2025年1月13日まで。
美術史上初めて米国が世界の中心地となった1950年代、その最前線を担っていたのがニューヨーク。ソール・ライターも、アートの“新天地”を目指しこの地にたどり着いた若者たちのひとりだった。しかし、ライターは肥大化していくアートの潮流に背を向けるように、レンズを通して発見したニューヨークの街中に潜む色彩と詩情に満ちた小さな断片を写し取り、その大半を世に知らせぬままこの世を去った。
1950年代からファッション・フォトグラファーとして活躍しながら、50代で表舞台から完全に姿を消し、自宅周辺からほとんど離れることなく、自らの美意識に淡々と従って生きていたライター。生活が一変したのは、2006年、ドイツのシュタイデル社が刊行した初の写真集『Early Color』だった。
この一冊により、忘れ去られた存在であった80代のライターは「カラー写真のパイオニア」として注目を浴びることになった。以降、世界各地で展覧会の開催や写真集の刊行が相次ぎ、2013年の没後もその評価はさらに高まり、没後なお「発展途上の写真家」であり続ける稀有なアーティストである。
2014年、ソール・ライター逝去の翌年に創設されたソール・ライター財団が着手したのが、未整理となっていた大量のカラーポジのアーカイヴ化。2023年、ソール・ライター生誕100年にあたって未公開のカラー作品約150点が写真集、プロジェクションというかたちで披露された。
本展では、没後に発掘されたポジをソール・ライター財団監修のもと、新たにプリントした作品44点を日本で初めて展示する。「写真はしばしば重要な瞬間をとらえるものとして扱われるが、本当に写真がとらえているのは、終わることのない世界の小さな断片と思い出なのだ」と語っていたライター。唯一無二の色彩の世界を存分に体験できる貴重な機会となる。