染色家の柚木沙弥郎(ゆのき・さみろう)さんが1月31日、うっ血性心不全のため亡くなった。享年101。
1922年、東京都の田端にて洋画家の柚木久太と寿の次男として生まれる。42年に美術史を学ぶため東京帝国大学(現・東京大学)に入学し、43年に学徒動員。終戦後、父の生家である岡山県倉敷市玉島に復員。46年に倉敷市の大原美術館に勤務。そこで芹沢銈介による和紙に大胆な模様を型染めした暦(カレンダー)に出会い、民藝に魅せられ、柳宗悦の著書を通して工芸への関心を深めていった。
47年、大学での研究と仕事を捨て、芹沢のもとに弟子入り。修行の一環として静岡県由比町の正雪紺屋に住み込み、型から染めまでの染色の技法を学んだ。48年には初作品「紅型風型染布」を制作。柳宗悦に呈示し、日本民藝館の所蔵となる。72年には専任講師を経て女子美術大学教授に就任、91年に退職するまでに学長も務めた。2021年毎日デザイン賞を受賞。
日本民藝館をはじめ渋谷区立松濤美術館、岡山県立美術館、神奈川県立近代美術館 鎌倉別館・葉山、世田谷美術館、国立ギメ東洋美術館(パリ)、PLAY! MUSEUMなど国内外の美術館で個展を開催し、その作品は幅広い年齢層の人々に親しまれた。
100歳を超えても染色を続け、2020年、ニューヨークに本社を置くホテルチェーンのアジア初進出となった「エースホテル京都」ではホテルのロゴ、客室内の作品を手がけたことでも話題となった。