六本木アートナイトが、3月23日から24日にかけて六本木ヒルズや東京ミッドタウンをはじめ、六本木各所で開催されました。今年は、街中でのオフサイト企画も。
「時間の経過は、朝日がのぼり、日が沈むの繰り返しで、進めたり早めたりできないもの。
でも絵の前に立つと、いろんなところにいける、タイムトリップできる。
どうしようもできない時間の蓄積を目撃していこう」
本イベントのアーティスティックディレクターであり、今回のメインモニュメントを手がけた日比野克彦さんは語りました。
毎年、日の入りから日の出までをコアタイムと呼んで、日が暮れたあとからオールナイトで盛り上がるのが「アートナイト」。コアタイムを中心に、一夜限りのアート一色の夜を振り返ります。
(文・写真: 加賀美令、清水覚子、田原新司郎、吉岡理恵)
■《船頭丸》の出港を宣言し、六本木アートナイトが開幕!
■ 巨大なフネを土台に10組のアーティストが「アートブネ」を制作
オープニングセレモニー会場の六本木ヒルズアリーナを「出港」した《船頭丸》は、夜の六本木の街中を回遊。街中には、巨大な「アートブネ」が各所に展示された。
マスキングテープを使って植物や動物を描いた作品などを展開する淺井裕介の《混生系譜丸》。国立新美術館エントランス前に設置された作品に、日没とともに黄色いあたたかい光が燈された。
■ 街を回遊する私たちもまたフネのよう「アートポート六本木」
街中には私たちが寄港する「アートポート」が。ロアビルや六本木交差点といった街の代名詞ともいえる場所をはじめ、下町の面影が残る街角を舞台に、若手アーティストがパフォーマンス、映像、立体作品などを展開した。
昨年、岩井優はカンボジアの首都、プノンペンに滞在。これまでも「清掃」をテーマに取り組んでいる彼は、スラム街の一角にあった「ホワイトビル」と呼ばれる建物を現地の住民と清掃。その記録映像を、ビルのような形をしたベニヤ板に投影した。滞在中に感じたプノンペンの街やそこに暮らす人々のエネルギーのダイナミズムの在り様を、六本木という街と人に重ねあわせていると話していた。
ロアビルのエントランスに出現した大きな「虫歯」は竹川宣彰による作品。根治するまで我々に痛みを与え続ける虫歯をモチーフに、日本が抱える原発問題を身近なイメージで表現した。
■ 夜の公園でダンスパフォーマンス「公園で公演」
■ 複数の「白雪姫」が街を徘徊。想像力がかきたてられる非日常の光景
《ブランシュ・ネージュ》は、映像、ダンス、パフォーマンス、芸術の異分野にまたがり活動するフランスのカトリーヌ・バイによるパフォーマンス作品。その国の文化や習慣を取り込み、環境や演じる人によって内容は毎回違う。世俗的な白雪姫というイメージアイコンと各国の習慣や動作を掛け合わせ異様な世界観を作り出し、私たちの固定観念を揺さぶる。 1時間ほどの晩餐を終えた白雪姫たちは、コアタイムが終わる5:00の日の出まで東京ミッドタウン内に突如現れては行進したり、寝そべってみたりとパフォーマンスを続けた。機関銃を脇に携えて行進する白雪姫軍団は、強烈なイメージで、ついつい写真を撮った人も多いだろう。
東京ミッドタウンでは同じくフランス発のパフォーマンス《スーフルール-ささやきの詩想レジスタンス》が登場。黒い傘をさした黒ずくめの男女が、長い筒を持って練り歩いた。
六本木アートナイトに併せて、展覧会に関連したプログラムも開催された。
国立新美術館では、「アーティスト・ファイル2013」と連動して、利部志穂と川西隆史によるライブ・パフォーマンス《フレルヒカリ》が行われた。美術館入り口の木々には、國安孝昌の作品が設置された。
24日18:00。また日の入りの時間が訪れ、灯台に最後の炭がくべられ六本木アートナイトは今年も閉幕しました。
TABlogライター:
加賀美 令 1975年生まれ、東京都在住。大学卒業後、働きながら2005年武蔵野美術大学通信教育課程にて学芸員資格取得。いくつかの展覧会のキュレーションに関わったり展覧会ガイドなどを経験した後、2005年夏よりフルタイムでアートの仕事に従事。他の記事>>
清水覚子 「三度の飯と現代美術」な大学院生。Tokyo Art Map のインターンを経て、webギャラリー ffllaatt.com の展覧会企画スタッフ、NPO法人アートル・アクションスタッフ、カルチャーイベントの Webデザイン・広報請負をしている。
田原新司郎 Tokyo Art Beat・ソーシャルメディア、セールスマネージャー。都内を中心に自転車でアートスペース巡りしつつ、写真を撮ったり、たまに翻訳したりしている他の記事>>
吉岡理恵 フリーライター。アートプロデューサーのアシスタントを経て、フリーランスで展覧会企画、Tokyo Art Beat 他でエディター、ライターとして活動。他の記事 »