5月27日と28日の2日間、六本木の街を舞台にした一夜限りのアートの饗宴「六本木アートナイト2023」が、4年ぶりにオールナイト開催を迎える。
今年のテーマは「都市のいきもの図鑑」。メインプログラム・アーティストの栗林隆+Cinema Caravan、鴻池朋子を筆頭に、およそ45組による約70のプログラムが展開される。本記事では、開催に先立って行われたプレスプレビューをもとに、展示作品やパフォーマンスを紹介する。
開会式には、栗林隆、Cinema Caravan主宰の志津野雷、森美術館アソシエイト・キュレーターの椿玲子が登壇。栗林隆とCinema Caravanは昨年、世界最大級の現代アートの祭典・ドクメンタ15に参加。そのきっかけは、インドネシア在住の栗林が、ドクメンタ15のキュレーションを務めたルアンルパとかねてより親交があり、参加を依頼されたことだという。ある意味で、栗林や志津野らにとっては「日本への凱旋企画」(志津野)である本展。栗林は以下のようにコメントした。
われわれ参加作家や、スタッフの方々も含めて、僕たちはどこまでこの六本木アートナイトを楽しめるのか、どうやって人と人とはつながっていくのか、そういった実験場にできればと思います。
栗林隆+Cinema Caravanは六本木ヒルズアリーナにて、ドクメンタ15に出展された《元気炉》や栗林のライフワークでもある《YATAI TRIP》などをふくめた「Tanker Project」を発表する。
プレゼンテーションでは、オランダを拠点に1991年に設立したパフォーマンスカンパニーClose-Act Theatreが《White Wings》を発表。5人の演者たちはスティルツ(ヨーロッパで発達した、足に装着して人間をかさ上げする棒状の器具)を装着し、白い翼をまとった幻想的なキャラクターに変身した。会期中も複数回のパフォーマンスが予定されているため、訪れる際はぜひ上演時間をチェックを。
もうひと組のメインプログラム・アーティスト、鴻池朋子の作品は、国立新美術館で公開。近年は「ジャム・セッション 鴻池朋子 ちゅうがえり」(アーティゾン美術館、2020)や「みる誕生 鴻池朋子展」(高松市美術館など、2022〜23)といった展覧会を開催し、今年4月には紫綬褒章受章も話題を呼んだ鴻池。これまで、閉じた体系としてのアートや美術館という制度を問い直す作品を発表してきた。
本展では、角川武蔵野ミュージアムで公開された《武蔵野皮トンビ》や狼の目線を獲得するための《狼ベンチ》、旅先で聞き取った話がランチョンマットに仕立てられた《物語るテーブルランナー》などを公開する。
国立新美術館ではほかにも、人間と動物の関係を写真や映像で写したうらあやかや、同館の敷地内で採取した土や水を用いて「つぼ」を制作するしばたみづきらの作品、パフォーマンスも公開される。
続いて、六本木ヒルズ内の展示作品を紹介。江頭誠は《DXもふもふ毛布ドリームハウス》を制作。かつては西洋の高級感を演出するアイテムだった花柄毛布で、リカちゃんハウスのような空間を作り上げた。
大小島真木+Maquis《SHUKU》は、直径1mほどの鏡張りの正十二面体オブジェに、ガラス造形やLED照明、音響などが施されたインスタレーション。日本各地に伝わる古代の神「シュク」が念頭に置かれた本作は、「サイボーグとしての御神体」が表現されているという。
屋外にはエマニュエル・ムホーによるカラフルなインスタレーション《100 colors no.43「100色の記憶」》が配される。各層には西暦が刻まれている本作は、訪れた人々に年号ごとの思い出を想起させるなど、「記憶の視覚化」がコンセプトだ。
六本木商店街では、工事中の仮設パネルを利用して、ナカミツキ《NEW MIX》と松田ハル《A Whole New World》が展示される。ナカは音楽や楽器についての考察をもとに、松田は3DスキャンやVRを用いて、それぞれ制作する作家だ。
東京ミッドタウンでは、若手アーティストを応援するコンペティション「TOKYO MIDTOWN AWARD」の受賞者6組の新作が「Street Museum 2023」としてプラザB1階にて公開される。出展作家は、中田愛美里、片貝葉月、studio SHOKO NARITA、馬蹴れんな、井村一登、平野利樹。
展示やトークイベント、パフォーマンスはほかにも多数。4年ぶりのオールナイト開催、気になるプログラムを見つけて六本木に足を運んでみてはいかがだろうか。