4年ぶりにオールナイト開催となり、5月27日から28日の2日間にわたって開催される「六本木アートナイト2023」。メインプログラム・アーティストに栗林隆+Cinema Caravan 、鴻池朋子を迎え「都市のいきもの図鑑」をテーマとした今年の全プログラムの情報が公開された。約45組のアーティストらによる約70のプログラムが六本木各所で展開する。
まず注目したいのが、オランダを拠点とするパフォーマンスカンパニー「Close-Act Theatre」による《White Wings》。白い翼をまとった幻想的なキャラクターが街を優雅にウォーキングし観客を魅了。そのパレードは壮大なクライマックスを迎え、やがて魔法がとけるように消えていくという。開催日時と場所は以下。パフォーマンスは各約20分間。
●5月27日(土)
16:00~(公開リハーサル、六本木ヒルズアリーナ)、18:30~(六本木ヒルズアリーナ)、20:30~(東京ミッドタウン プラザ1階)●5月28日(日)
14:00~(六本木ヒルズアリーナ)、16:00~(六本木ヒルズアリーナ)、17:45~(東京ミッドタウン プラザ1階)
メインプログラム・アーティストの栗林隆+Cinema Caravanは、アートエネルギーを船に載せ、世界中に届ける《Tanker Project》を六本木ヒルズアリーナに出現させる。また、鴻池朋子は日本を横断しながら展示されている《皮トンビ》を東京ミッドタウンに降り立たせるほか、国立新美術館では《皮トンビ》と併せて《狼ベンチ》を展示する。
また、《Tanker Project》では3組のミュージシャン・パフォーマーによるライブも実施。旅の記録をつないだ映像とともにライブ公演する志津野雷+Play with the Earth Orchestra、オールドジャズ、クラシック、ジプシー音楽、民謡、エレクトリックなどの要素を取り入れたオリジナル曲を演奏するOtoji+Ray、旭川アイヌのOKIと北海道や樺太に伝わる新旧様々なアイヌの伝統歌「ウポポ」の再生と伝承をテーマに活動するMAREWREWも出演。これらはすべて観覧無料だ。
●志津野雷+Play with the Earth Orchestra《Play with the Earth》
5月27日(土) 18:50~20:00(六本木ヒルズアリーナ)●Otoji+Ray《Otoji+Rayコンサート》
5月28日(日)12:00~(六本木ヒルズアリーナ)●OKI+MAREWREW《 OKI+MAREWREW コンサート》
5月28日(日) 16:00~(六本木ヒルズアリーナ)
ここからは各エリアのプログラムを紹介。六本木ヒルズでは、エマニュエル・ムホーの100色で彩られた層が織りなす、記憶を辿るインスタレーション《100 colors no.43「100色の記憶」》、時代とともに変化する憧れの生活様式を表現したリカちゃんハウスをモチーフに、花柄毛布で憧れのドリームハウスを作った江頭誠の《DXもふもふ毛布ドリームハウス》、大小島真木+Maquisは、直径1メートル超のミラー貼りの正十二面体オブジェを中心に、ガラス造形、鉄工、植物、LED照明、音響などを交えて展開するミクストメディアのインスタレーション《SHUKU》を展示。
このほかにも台湾出身のジャン・シュウ・ジャン(張徐展)による半分が人間で半分がネズミや狐のシャーマンダンサーが登場する映像作品や、若手舞踊家総勢20名以上の大群舞が展開する櫛田祥光《歓喜》(5月27日 22:30~、5月28日 15:00~)、早朝の六本木ヒルズアリーナでインビジブル×日本フィルハーモニー交響楽団の演奏にあわせて体操できる《クラシックなラジオ体操》(5月28日 5:30~)など、多彩なプログラムが目白押しだ。
東京ミッドタウンでは、井原宏蕗による紙の虫食いなどムシにまつわる展示、2022年度の「TOKYO MIDTOWN AWARD」受賞者6組による新作展示やワークショップ、様々なストレスをテーマに制作する馬蹴れんなのストリート・アート・パフォーマンス《モラトリアムのストレス》(5月27日 18:00~21:00、5月28日 15:00~18:00)などを実施。
また、サントリー美術館6階ホールでは、兵庫県南あわじ市に約500年前から伝わっている淡路人形浄瑠璃を継承する淡路人形座による人形浄瑠璃公演「戎舞」(5月27日 13:30~14:15、15:30~16:15、18:00~18:45)を上演。無料だが、別途美術館入館料を要する。また事前申込みを優先するので興味のある方は早めにチェックを。
国立新美術館では、パフォーマンスなどを通して他者との関わりを問ううらあやかや、しばたみづきによる国立新美術館の敷地内で採取した土や水を主な素材に、館内の屋上庭園に生える竹林とコラボレーションした展示などを開催。また、パブリックスペースを活用した「NACT View」シリーズの第2回として、アニメーション作家・築地のはらによるプロジェクションマッピングとARアニメーションの展示「ねずみっけ」も開催される。
美術館や商業施設だけがアートナイトの舞台ではない。岩崎貴宏は、スクラップ&ビルドによって変化し続ける象徴的な都市、六本木をモチーフとした作品を第1レーヌビル(港区六本木5丁目3−4)で展示。林千歩は、地球が人間視点による無数の事実を語る《もうないかもしれないよ》などの映像2作品をイグノポール1階(港区六本木5丁目9−20)で上映する。また、西尾美也+東京藝術大学学生のチームは、「もうひとつの3拠点」という取り組みを実施し、三河台公園(港区六本木4丁目2−27)、六本木中学校(港区六本木6丁目8−16)、矢口ビル1階(港区六本木5丁目10−31)の3ヶ所に、地域から学び、地域の人々とともに生み出す「共有空間」を提示する。
ここまで紹介してきたプログラムは全体のごく一部。わずか2日間という短い時間に、表現や都市の魅力がぎゅっと凝縮しているのが六本木アートナイトの魅力だ。夜から朝まで、そしてまた夕方まで。思う存分アートを楽しんでほしい。