世界的に著名な彫刻家、リチャード・セラが3月26日、肺炎のためニューヨークの自宅で亡くなった。享年85。
セラは、1938年カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。父親は鉄工所で働き、自身も若いころ同じ仕事に就いていた。1960年台にイェール大学で美術を専攻し、ヨゼフ・アルバースの教えを受ける。ロバート・ラウシェンバーグ、アド・ラインハート、フランク・ステラらに出会い、芸術の道へと進んだ。ヨーロッパでの滞在を経て1966年からニューヨークに住み、先日逝去したカール・アンドレやジャスパー・ジョーンズ、ブルース・ナウマン、エヴァ・ヘスらと交流。鉛や鉄板、鋼板といった工業用素材を用いた作品で新しい彫刻の世界を切り拓いた。
代表作に、ビルバオ・グッゲンハイム美術館のコレクションである長さ102mに及ぶ《Snake》などがある。
有名なエピソードとして、1981年にマンハッタンの連邦ビル前広場に設置した巨大な鉄の彫刻《傾いた弧》に対し、人々から苦情が集まったことから裁判となり、8年後に撤去されたことがある。本件はパブリックアートをめぐる景観論争の転換点とされている。
日本との関わりとしては、1970年に第10回東京ビエンナーレとして知られる「人間と物質」展へ招聘され、初の野外彫刻《To Encircle Base Plate (exagram)》を発表。この日本訪問がのちの制作にも大きな影響を与えたという。1994年、第6回高松宮殿下記念世界文化賞 彫刻部門を受賞。
2023年9月〜12月にはファーガス・マカフリー東京で壁に設置されるインスタレーション・ドローイングを展示する個展が開催された。