《陽光のなかの裸婦》の隣で《草の上の昼食》が映写される。「ルノワール+ルノワール展」では、絵画の巨匠ルノワールと、偉大な映画作家ジャン・ルノワールの作品いくつかが対になって展示されている。額縁の中の絵画と、スクリーンの中の映画のワンシーンが、どれもよく似ていて、重なって見えてくる。
父ルノワールと息子ジャン・ルノワールの作品を、並列して展観し、共通するさまざまなテーマを紹介しよう、というのがこの展覧会のコンセプト。2005年にパリのシネマテーク・フランセーズで開催され、話題となった展覧会だ。
ルノワールはルノワール、ジャン・ルノワールはジャン・ルノワール。いくらふたりが親子であろうと、作品を親子関係で判断してしまうのは、タブーではないのか。
「ルノワール+ルノワール展」は、このタブーを逆手に取った展覧会だが、対になるふたりの作品のピックアップの仕方が見事。モチーフ、構図、色彩、光の取り入れ方、どれもよく似たものが選ばれる。ジャン・ルノワールは、この絵の実写版を撮ろうとしていたのかな、などと考えながら、腕を組んで唸りたくなる。「ムム、瓜二つ」と。父の実写版として映画を撮っているという感覚が本人にあったかどうかその実分からないが、そのような考えに、展示のロジックによって導かれてしまう。
本来なら作品観賞に親子関係を持ち込まないほうがいいと思う。個別に観るのがやはり一番の見方だと思う。だがふたりの芸術家の親子がひとつの部屋に並べられる機会、はたまた、美術館で観る芸術と映画館で観る芸術がひとつに展示される機会は滅多にあるものではない。貴重な展覧会である。