公開日:2024年9月9日

「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」が銀座メゾンエルメス フォーラムで開催中。東博と連動した空間が織りなす「生の光景」に身を委ねる

会期は9月7日〜2025年1月13日。9月23日までの土・日・祝日は、ふたつの会場をむすぶシャトルバスも運行中。

「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」(銀座メゾンエルメス フォーラム、2024) 展示風景 撮影:畠山直哉 Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès

銀座メゾンエルメス フォーラムでは、「自然と日常」「生と死」といった要素に注目し、「地上の生の光景」を見出すアーティスト・内藤礼が手がけた個展「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」が開催中だ。会期は9月7日〜2025年1月13日まで。本展は、東京国立博物館(以降、東博)で開催中の同名の展覧会(〜9月23日)と連携した展覧会であり、東博から銀座メゾンエルメス、そしてふたたび東博へと戻るという、一種の円環を描くような展覧会構成となっている

「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」(銀座メゾンエルメス フォーラム、2024) 展示風景 撮影:畠山直哉 Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès

内藤礼は1961年広島生まれ。現在は東京を拠点に制作を行っており、光や水などの自然の事物と、リボンやガラス糸などのきわめて日常的なモチーフを掛け合わせた空間インスタレーション作品を生み出してきた。近年の主要な活動としては、豊島美術館の恒久作品《母型》(2010)や、「明るい地上には あなたの姿が見える」(水戸芸術館 現代美術ギャラリー、2018)、「うつしあう創造」(金沢21世紀美術館、2020)などが挙げられる。

内藤礼  母型 2010 豊島美術館 撮影:鈴木研一

今回の展覧会における一連の構成は、東博に収蔵品である縄文時代の「土版」にインスピレーションを受けて練られたもの。内藤が「母体」と呼ぶこの造形物は「生と死を畏れた縄文時代の人々が、生きていくために生み出した『祈りのもの』(内藤)」であり、内藤作品において重要なテーマのひとつである「往還する生と死」「死者・生まれる前の者への祈り」を象徴するものだ。

ふたつの会場には、共通する絵画作品や立体作品が展示されており、それらが時間的/空間的な超越をもってひとつの語りを展開する。たとえば《color beginningbreath》は2023〜24年にアーティストが日々、描いていた絵画シリーズで、アーティストが制作を通じて過ごした時間、鑑賞者が過去に作品を見た時間、見ている時間など、複数の時間がときに重なりながらも、決して巻き戻すことの出来ないものであることが感じられる

「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」(東京国立博物館、2024) 展示風景 撮影:畠山直哉

古代から連なる様々な年代・場所の収蔵品が保管されている東博に対して、収蔵作品を持たない銀座メゾンエルメスのフォーラムは、東京という都市に浮かぶ「過去から隔たれた場所」でもある。同館の近代的なガラスブロックを通じて差し込む、人工的な光や色彩に満ちた空間に配置された、カラフルなポンポン、透明な風船やガラス瓶などの断片は、東博にあったそれとはまた違った顔を見せながら「生の没入」を儚く映し出すようだ

「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」(銀座メゾンエルメス フォーラム、2024) 展示風景 撮影:畠山直哉 Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」(銀座メゾンエルメス フォーラム、2024) 展示風景 撮影:畠山直哉 Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès

また、会期が重複している9月23日までの土・日・祝日は、ふたつの会場をむすぶシャトルバスが運行している(発着時間などの詳細は公式ウェブサイトから)。ふたつの展示空間を同時に体験できる期間はわずか2週間と限られているため、ぜひこちらの利用も検討に入れながら足を運んでみてほしい。銀座メゾンエルメスと東博という異なる属性を持つ空間を行き来し、それぞれで内藤が生み出した「生の光景」に身を委ねる体験は、秋の訪れを感じるいまの時期にとても心地よく感じられるはずだ。

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