© Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, Katsize Films, The Y House Films
伝説の写真家、深瀬昌久と最愛の妻・洋子に焦点をあてた映画『レイブンズ』が3月28日から全国公開される。
本作は「第37回東京国際映画祭」でアジアワールドプレミアを果たし、「第31回アメリカ・オースティン映画祭」では観客賞を受賞。監督・脚本を務めたのは、写真家、ミュージシャン、グラフィックデザイナーとしてのキャリアを持つイギリス出身のマーク・ギル。主演は、海外で注目を浴びた『SHOGUN 将軍』に出演し、第82回ゴールデングローブ賞で助演男優賞を受賞した浅野忠信。“最愛の妻”役を演じるのは瀧内公美。そのほか、古舘寛治、池松壮亮、高岡早紀ら実力派俳優が集結する。
本作は、1974年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された「New Japanese Photography」展で森山大道らとともに称賛を浴びた伝説の写真家・深瀬昌久の生涯を、実話とフィクションを融合させながら描く。78年に及ぶ波瀾万丈の人生のなかで、写真に憑かれた天才の狂気と、撮ることでしか愛し方を知らなかった純粋な魂を映し出す。
さらに、深瀬が抱え続けた闇にも迫る。それは異形の“鴉の化身”として姿を変え、哲学的な知性で人々を翻弄する存在となる。そんな彼を救おうとするのは、最愛の妻・洋子。狂気と愛が交錯するダークでシュールなラブストーリーが、鮮烈に描かれる。
全国公開に先立ち、マーク・ギル監督は以下のようにコメントしている。
私は洋子を形容するのに「ミューズ」という言葉は使いたくない。洋子は、まだ女性が自分の生き方を確立するのが困難だった日本の社会で、時代の先を歩いていた。いっぽうで、日本の伝統や因習のなかで尊敬されるべき存在であろうとした。
その意味で『レイブンズ』は日本社会と家族を描いた映画になるであろう。伝統と歴史を犠牲にして新しい文化に傾いていく日本。欧米文化の流入と60年代70年代にピークを迎える快楽主義思想のなかで、深瀬は敗戦後の混乱と古い世代との隔絶の狭間で変わっていく日本の中心に自分がいることを認識していたのである。
ここ数年来、世界の映画ファンから実話の映画化に対する欲求が高まっているのを感じる。ここに世界的な評価の高まりとともに20世紀最高の写真家のひとりとして言及され始めた深瀬昌久という写真家の物語がある。
本編には深瀬の作品が多数登場し、その独創的な世界観を楽しむことができる。天才写真家が抱えた光と闇を描いた本作の公開が待ち遠しい。