「建築界のノーベル賞」とも呼ばれるアメリカのプリツカー賞に、今年の受賞者として建築家の山本理顕が発表された。1979年に始まった建築界で最も権威のあるプリツカ―賞。日本人では、丹下健三や安藤忠雄、妹島和世+西沢立衛/SANAAらが受賞しており、山本は2019年の磯崎新に次いで9人目。これにより日本が世界で最も受賞者の多い国となる。
山本は、中国・北京で生まれ、日本大学や東京藝術大学で建築を学んだあと、公共の建物や個人の住宅など数々の設計に従事。一貫して重視してきたのは現代社会で失われつつある、人と“コミュニティー”とのつながり。そのため、外壁を広い透明なガラス面で中が見えるようにしたり、開放的な空間を取り入れていることが特徴のひとつ。こうした特徴が「建物の内側と外側の境界を目立たないようにし、建物を通して人々が集まり、交流する機会を増やす役割を果たしている」と評価され、受賞につながった。
代表作は、「埼玉県立大学」「公立はこだて未来大学」、スイス・チューリヒにある複合施設「ザ・サークル」など。また、唯一手がけた美術館「横須賀美術館」は、ガラスと丸穴のあいた鉄板の入れ子構造からなる外観に、地形を利用し景観と調和したデザインで、館内にいながら外の自然を感じることができる。
「小さな丸穴からは森の深い緑が見えます。晴れた日の夕方、丸穴から見る空の色は驚くほど濃い青色です。大きな丸穴の海を大きな貨物船が通過していきます。雨の日、寒い日、暑い日、長い時間、短い時間、時の変化を楽しむことができる美術館です」―山本理顕(横須賀美術館ウェブサイトより)
山本は、1月に起きた能登半島地震の被災地でも、能登半島の“コミュニティー”を守りながら住宅の再建を進めることが重要として、被災地を訪れて地域の住民や建築家と意見を交わしていくという。