スケジュール表には、来年の3月から「写真はものの見方をどのように変えていくか」(仮称)という未来志向的な内容の展示が予定されているようです。第四部「混沌」は第一部「誕生」、第二部「創造」とは異なり、作家性が全面に押し出た展示となっています。展覧会会場に入ってすぐにダイアン・アーバスの写真とアメリカにおける彼女の死の衝撃を綴ったプラカードから始まる構成は、「一人の写真家」がいかに世界的に影響力を持つかを端的に示しているかのようです。アーバスの死から始まり、アメリカ現代写真におけるニュー・カラーの登場、現代アートと写真の邂逅、作家性を如実に示すポートフォリオ、美術館と写真の関係そしてエイズと写真へと至る展示は単なる写真史には収まらず、アメリカの歴史自体を反映しています。写真一つ一つの背後に見え隠れするアメリカの細部を読み取る作業こそ、この展覧会が鑑賞者に投げかけていることではないでしょうか。
展覧会の後半は現代の日本人写真家にスポットを当て、各作品を紹介しています。アラーキー、森山大道を筆頭に、九龍城砦を撮影した宮本隆司、北部同盟のマスード指令官に密着取材した長倉洋海、現在「デジタルキッチン」を撮り続けている小林のりおなど、個性豊かな作家の作品が並べられています。そして、展覧会の最後はアメリカ、ヨーロッパ、日本以外の地域の優れた写真家(トレイシー・モファット、李家昇)を紹介して、展示を終えています。最後に、展覧会会場を後にしたら、是非四階の図書室に寄ってみてください。ここでは古今東西の写真集を実際に手にとって見ることができます。展覧会で気になった写真家の作品も所蔵しているかもしれません。素晴らしい写真集との出会いが待っていることでしょう。
Bunmei Shirabe
Bunmei Shirabe