1962年読売アンデパンダン展でデビューし、60年代の日本現代美術でおこった<反芸術>の旗手としても知られる清水晃の最新作が青山の裏通りでひっそりと展開されていた。
清水晃の作品には日本を感じる。みたことがないくせに日本の原風景を感じる。それは古い映画にあったようなシーンの断片や子供の頃に読んだおとぎ話や、昔祖母が歌ってくれた民謡などが混ざってできたような奇妙な絵ではあるが。つるんとした現代社会に生きる私にはそれをみせられることは居心地を悪くもし、同時に大いなるルーツに抱かれた安堵感も覚える。
2006年の今、清水晃の作品からは色があふれている。<反芸術>といわれた時代の代表的な作品「色盲検査表」や「リクリエーション」から、舞踏家の土方巽との親交から影響を受けたと思われるコラージュやオブジェ、ただひたすらに暗黒の「漆黒から」のシリーズを通して彼がいきついた現在の色の洪水。過去のほとんどの作品から続いて用いられる作家の幼少の原風景を示す二つのモチーフ「鋏」と「釣り具」は今回の作品にも潜んでいる。一貫して「自己」に向かいつづけている作家の作品が、暗黒から光へ向かったところに私は作家の昇華をみる。
ポップ、ネオ・ダダ、暗黒舞踏、、。清水晃はまさに日本の現代美術の生きる証であるにもかかわらず、多くの人の目にふれられる機会が少ないのは非常に残念である。レビューがぎりぎりになってしまったが、是非作品を体感していただきたい。
2006年5月21日まで、ギャラリー十玄門 〒107-0062港区南青山6-6-20 電話03-3498-6620にて開催。
Chihiro Murakami
Chihiro Murakami