でも私がこの展覧会が興味深いと思った一番の理由は、日本ではなかなか多くは見られない、「デザイン」に焦点をあてた展覧会である、という点です。
北欧のデザインはシンプルで、色や模様が明るくかわいく、機能的で汎用性があり、しかもリーズナブルな値段で買える、ということからたくさんの人に愛されています。しかしこの展覧会は単にプロダクトデザインの造形的な特徴を紹介しているだけでなく、アラビア釜の歴史と社会背景の影響を時間軸にそってテーマ化し、それぞれに説明を加えることで、これまであまり知ることのなかったフィンランドの近代デザインの流れやデザイン哲学を紹介する構成になっているところも見どころです。特に第二次大戦後直後の1945年にデザイナーとして就任したカイ・フランクの功績がいかに大きいかということは、彼のデザインしたテーブルセットーーサイズや用途による限定を解放し、また数量を自由に選んで購入できる、という今では当たり前のスタイルを提案したことからも想像できるでしょう。
余談ですが、会場の東京都庭園美術にはゆっくりくつろげるきもちのよいガーデンと最近リニューアルオープンしたオープンテラスのカフェレストランもあります。頭の感性も心の感性も心地よーく刺激する北欧デザイン展はやっぱり必見でしょう!?
Chihiro Murakami
Chihiro Murakami