19世紀末、文化が大きく揺れ動く激動のウィーンで活動し、早世した画家エゴン・シーレ(1890〜1918)。本展は、世界有数のシーレ・コレクションで知られるウィーンのレオポルド美術館の全面協力のもと開催される、日本では30年ぶりの大回顧展。シーレの油彩画、ドローイングなど約50点が来日するほか、クリムト、ココシュカ、ゲルストルら同時代の作家作品も公開される。エゴン・シーレを筆頭に、ウィーン世紀末美術を概観できる展覧会だ。
甲斐荘(甲斐庄)楠音(1894〜1978)は、大正から昭和にかけて京都で活躍した作家。日本画家として活動を始め、戦前は高い評価を受けたものの、その後映画業界へ転身し、時代風俗考証家として多くの映画制作に携わった。1997年、京都国立近代美術館で開催された「甲斐庄楠音展」が彼の画業の再評価を試みた企画展だったのに対し、本展は近年、彼が手がけた時代劇衣裳が京都・太秦で再発見されたことを受け、画家・映画人・演劇人としての甲斐荘の全体像を明らかにすることを試みる。なお、本展は7月に東京ステーションギャラリーへ巡回予定だ。
会場:京都国立近代美術館
会期:2月11日〜4月9日
展覧会詳細
私たちが社会のなかで生きていくうえで、必要不可欠な「ケア」。本展は、近年のアートシーンでも重要なトピックである「ケア」と社会のつながりを問い直す企画展。1960〜70年代の第2波フェミニズムを背景に生まれた表現から、私的な育児日記の読解まで、多様な作品が紹介される。出展作家は、青木陵子、AHA![Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]、石内都、出光真子、碓井ゆい、ラグナル・キャルタンソン、二藤建人、マリア・ファーラ、リーゼル・ブリッシュ、ホン・ヨンイン、本間メイ、ヨアンナ・ライコフスカ、マーサ・ロスラー、ミエレル・レーダーマン・ユケレス、ユン・ソクナム。見どころなど、詳細はニュースをチェックしてほしい。
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
会期:2月18日~5月7日
展覧会詳細
日本を代表する現代彫刻家として知られる戸谷成雄。地元の長野県立美術館で11月4日~2023年1月29日まで開催される個展が、埼玉県立近代美術館へ巡回する。国内外の戦後美術において制度として解体された彫刻と向き合い、「表面」「構造」といった独自の彫刻概念をもとにその本質から再構築しようと試みてきた戸谷。本展では、初期から近年の作品まで代表作を含め約30点を、制作年に縛られることなく、コンセプトに沿って展示される。展覧会と合わせて、戸谷へのインタビューもぜひチェックしてほしい。
会場:埼玉県立近代美術館
会期:2月25日~5月14日
展覧会詳細
大正・昭和期の近代化する社会のなかで、日本画を牽引した早世の画家、速水御舟。その画風は30年の画家生活においてめまぐるしく変遷し、大正期の細密描写による写実表現から、古典的な絵画への回帰を経て、単純化と平面性を伴う後期作品へと至る。本展は、その多彩な画業に迫る回顧展。およそ100点の本画や、素描が展示される。
会場:茨城県近代美術館
会期:2月21日~3月26日
展覧会詳細
ルーブル美術館の名品が東京へ。本展で公開されるのは、膨大なルーヴル・コレクションからセレクトされた、「愛」をモチーフとする作品たち。18世紀フランス絵画の至宝ともいうべきジャン=オノレ・フラゴナール《かんぬき》、フランス新古典主義の傑作であるフランソワ・ジェラール《アモルとプシュケ》をはじめ、74点の名画が揃う。詳細はニュースをチェック。なお本展は、6月に京都市京セラ美術館へ巡回予定だ。
日本写真の黄金時代である1960〜70年代に、荒木経惟や森山大道らとともに頭角を表した深瀬昌久は、写真を通じて「私性」と「遊戯」を追求してきた。本展は、彼の代表的な写真集『鴉』(1986)に収められた作品など、同館のコレクションを中心に、その人物像や表現の特異性に迫る回顧展だ。
京都を代表する禅寺のひとつである東福寺。本展は、その寺宝をまとめて紹介する初の機会だ。「画聖」とも呼ばれる絵仏師・明兆による記念碑的大作「五百羅漢図」全幅が修理を経て初公開されるほか、応仁の乱による戦火を免がれた貴重な文化財の数々、特大サイズの仏像や書画類など、優品が勢揃いする。なお本展は、10月に京都国立博物館へ巡回予定だ。
開館5周年を迎える富山県美術館では、日本を代表する版画家・棟方志功の個展が開催。本展は、創作の拠点となった青森、東京、富山の3つの美術館(同館、青森県立美術館、東京国立近代美術館)の協力のもと企画された、棟方の生誕120周年を記念する展覧会だ。棟方と各地域の関わりを軸に、板画、倭画、油彩画といった多様な手法を用い、本の装丁や挿絵、包装紙などのデザイン、映画・テレビ・ラジオ出演まで、「メディア」を縦横無尽に駆け抜けた棟方の活動に迫る。
1952年12月に開館した東京国立近代美術館にとって、2023年は開館70周年にあたる。これを記念して開催される「重要文化財の秘密」展は、明治以降の絵画・彫刻・工芸のうち、重要文化財に指定された作品のみを公開する豪華な展覧会。各作品が重要文化財に指定されるまでの評価の変遷を追う「傑作の美術史」も紹介される。重要文化財の同時公開という、またとない機会である本展を通じて、日本の近代美術の魅力を再発見できるはず。
会場:東京国立近代美術館
会期:3月17日〜5月14日
展覧会詳細
フランス北西端のブルターニュは、19世紀後半から20世紀にかけて各国の画家たちが訪れ、多くの作品が制作された地域。本展では国立西洋美術館の「松方コレクション」を中心に、国内美術館や個人コレクションおよそ30ヶ所からブルターニュを表した作品約160点が選定・公開される。画家たちがこの地に何を求め、見出したのかを探ると同時に、ブルターニュを訪れた日本の画家たちにも注目する。
2023年3月18日にリニューアルオープンする広島市現代美術館では、記念特別展「Before/After」が開催される。本展は建物の改修工事を契機とする「前/後」をひとつの足がかりとして、様々な「前」と「後」に着目。広島平和記念資料館に収蔵される被爆者たちの衣服を撮影するプロジェクトに取り組む石内都や、新しく購入されたシリン・ネシャットの作品を筆頭に、コウミユキ、髙橋銑、竹村京、毒山凡太朗、平田尚也、横山奈美、和田礼治郎の作品が公開される。詳細はニュースをチェックしてほしい。
会場:広島市現代美術館
会期:3月18日~6月18日
展覧会詳細
石川県金沢市の国立工芸館では、「ポケモンと工芸」という異色の組み合わせの展覧会が開催される。一見意外な発想だが、ポケモンがもつ「土」「炎」「電気」といったタイプは、工芸の原材料や製造工程で必要となるエネルギーと共通するものがあったり、収集や交換といったシステムもまた、工芸にかける作り手や愛好者の想いと重なるところがある。ポケモンアートプロジェクトの第2弾である本展は、日本を代表する工芸作家とのコラボレーションによる、可能性に満ちた企画だ。
本展は、世界にある「わからない」を探求し、人々の固定観念をクリエイティブに越えていこうとする現代アーティストたちの活動を紹介。現代アートを学校の「美術」「図画工作」といった科目から解放し、「世界」について学ぶあらゆる科目に通底する領域として定義を試みる。出展作家には、アイ・ウェイウェイ、青山悟、ヨーゼフ・ボイス、藤井光、畠山直哉、スーザン・ヒラー、奈良美智、ヤン・ヘギュなど。詳細はニュースをチェックしてほしい。
20世紀美術を代表するフランスの巨匠、アンリ・マティス。彼の世界最大規模のコレクションを有するポンピドゥー・センターの協力を得て開催される本展は、日本では約20年ぶりとなるマティスの大規模回顧展だ。絵画に加えて、彫刻、素描、版画、切り紙絵、晩年の最大の傑作と言われる南仏・ヴァンスのロザリオ礼拝堂に関する資料も展示される。翌年には延期していた国立新美術館での「マティス 自由なフォルム」展の開催も決定しており、2年連続でマティスの展覧会が開催されることになる。詳細はニュースをチェック。
19世紀末から第一次世界大戦の勃発まで、「ベル・エポック」の時代として芸術を生み出す活気に溢れていたフランス。その影響もあって、20世紀初頭においてフォーヴィスム、キュビスムといった新たな絵画のスタイルが展開され、抽象表現へ向かうことになった。本展は、そんなフランスの戦前から戦後にかけての抽象表現の動向に注目しつつ、さらに日本の実験工房や具体など、世界中で同時多発的に興った抽象絵画の歩みを展望する。
会場:アーティゾン美術館
会期:6月3日〜8月20日
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本展は、民藝を「衣・食・住」をテーマにひも解く展覧会。産地やそこで働く作り手の紹介も交えつつ、暮らしで用いられてきた民藝品を、約130件公開する。さらに、現在の民藝ブームに大きく寄与してきたテリー・エリスと北村恵子(MOGI Folk Artディレクター)によるインスタレーションも展示。柳宗悦が説いた民藝の、今までとこれからの展望を試みる。
イギリス・ロンドンのテート美術館のコレクションが来日する本展では、18世紀末から現代までの約200年間におよぶ表現のなかで、「光」にまつわる作品が厳選して紹介される。イギリス近代美術史を代表する「光の画家」、ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナーや風景画の名手、ジョン・コンスタブル、クロード・モネをはじめとするフランス印象派の画家から、写真という新たな技術により光を扱った、ラースロー・モホイ=ナジとバウハウス、そしてブリジット・ライリー、ジェームズ・タレル、オラファー・エリアソンなど現代アーティストの作品まで、約120点の作品が一堂に会する。
東京都現代美術館では、国内では27年ぶりとなるデイヴィッド・ホックニーの大規模個展が7月からスタート。1960年代にアメリカの西海岸で描いた初期の代表作から、近年の集大成というべき故郷ヨークシャー東部の自然を描いた大型絵画のシリーズ、新型コロナウイルスによるロックダウンのあいだにフランス北部のノルマンディーで描いた全長90メートルにも及ぶ新作まで、ホックニーの作品が100点以上が公開される。展示の詳細はニュースをチェック。
会場:東京都現代美術館
会期:7月15日〜11月5日
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イヴ・サンローランは1958年にクリスチャン・ディオールの急死をうけ、「クリスチャン・ディオール(DIOR)」のデザイナーとしてデビュー。62年からは自身のブランドを発表し、2002年の引退まで世界のファッションシーンをリードし続けてきた。本展は、イヴ・サンローラン美術館パリの全面協力のもと、日本で初めて開催される回顧展。ディオールでのデビューから、ブランドとして初のコレクション、そして独自のスタイルを確立するまでの変遷を、イヴ・サンローランによるルック110体のほかアクセサリー、ドローイング、写真によって紹介する。イヴ・サンローランの回顧展にもふれている、小石祐介がファッションとアートのつながりについて論じたインサイトはぜひチェックしてほしい。
千葉市美術館での「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊覧」や練馬区立美術館「日本の中のマネ ―出会い、120年のイメージ―」展といった展覧会で注目を浴びる福田美蘭の個展が、名古屋市美術館で開催される。レオナルド・ダ・ヴィンチの視点からの《モナ・リザ》を想像した《ポーズの途中に休憩するモデル》など代表作が集結するほか、新型コロナウイルス感染症やウクライナ侵攻に関する作品や、名古屋市美術館のコレクションにインスピレーションを得た新作も公開される予定だ。練馬区立美術館のマネ展にあたって、近年の制作について尋ねたインタビューもぜひチェックしてほしい。
会場:名古屋市美術館
会期:9月23日~11月19日
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「エコロジー」をテーマとする本展は、地球温暖化をはじめとする今日の環境危機を引き起こした人間中心主義を見直し、私たち人間と周囲の環境との新たな生態系のあり方を考えるもの。アグネス・ディーンズら海外作家の紹介に加え、高度経済成長の裏で環境汚染が問題となった1950〜70年代の日本で制作・発表されたアートを再検証し、現在の環境問題を日本という立ち位置からとらえることを試みる。さらに森美術館は、美術館自体をひとつの環境ととらえ、可能な限り輸送を減らし資源を再生利用するなど、エコロジカルな展覧会制作に挑戦する。詳細はニュースをチェック。
会場:森美術館
会期:10月18日~2024年3月31日
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