11月9日のクリスティーズ・ニューヨークで行われたオークションで、美術史を塗り替える記録が誕生した。ビル・ゲイツとともにマイクロソフト社を創業し、2018年に65歳の若さで亡くなったポール・ガードナー・アレンの所有した美術コレクションが総額15億ドル(日本円で約2200億円)を超える額で落札されたのだ。この額は、今年5月にニューヨーク・サザビーズで記録された、不動産開発業者であるハリー・マックローとリンダ・バーグ元夫婦のコレクションの9億2200万ドル(約1400億円)を超えて、オークション史上最高の落札額となる。
出品された60作品には、ピカソ、アレクサンダー・カルダー、デイヴィッド・ホックニー、ポール・シニャック、ジョルジュ・スーラ、ポール・セザンヌ、パウル・クレー、ゴッホ、ギュスターヴ・クリムト、アグネス・マーティン、ジャスパー・ジョーンズ、ゲルハルト・リヒター、ボッティチェリなど、列挙するだけでも目がくらむような近世から現代までの名前が並ぶ。これらのうち約1/4をアジア方面からの参加者が購入したという。
オークションにおいて1億ドル(約140億円)以上での落札は特別な意味をもつが、今回のオークションでは、スーラの《Les Poseuses, Ensemble(Petit version)》、ゴーギャンの《Maternité II》、セザンヌの《La Montagne Sainte-Victoire》、クリムトの《Birch Forest》、ゴッホの《Verger avec cyprès》の5作品が1億ドルオーバーを達成。
前日に投開票が始まったアメリカ中間選挙の結果によっては政治的混乱による価格の変動も予測されていたが大きな影響はなく、堅実なハード・アセット(美術品や不動産などキャッシュフローをもたらす実物資産)を求める富裕層のコレクターたちを安堵させたようだ。
事前に開催されたコレクション展に2万人が来場するなど、話題の大きかった今回のコレクション。今後開催される「Visionary: The Paul G. Allen Collection Part II」の結果も楽しみだ。