三井家が収集してきた日本・東洋の美術品を多数所蔵する三井記念美術館。昨年9月から行われていた改修工事が終了し、2022年4月29日からリニューアルオープンを記念した展覧会がスタートする。
「絵のある陶磁器 〜仁清・乾山・永樂と東洋陶磁〜」は、江戸時代の京都で作られた仁清や乾山らの色絵陶器、中国陶磁を写した永樂家の陶磁器などの「絵のある陶磁器」にフォーカスする。
日本の陶磁器の歴史では、器体に釉薬や絵具で絵が描かれるのは、桃山時代に美濃で焼かれた志野や織部に始まる。茶の湯の陶器として焼かれたそれらは、簡略化された草花や橋などの文様化されたものや幾何学文様などが描かれ、茶人のあいだで流行した。そういったトレンドを読みながら、大名茶人や公家の好みに応えた雅な茶陶を焼いたのが野々村仁清。優美なかたちと、色絵と呼ばれる色彩豊かな文様は、その後の京焼の方向性を示したとされる。
仁清から陶法を学んだのが、尾形光琳の弟である尾形乾山。京都の鳴滝に窯を築いた乾山は、光琳が絵を描いた角皿や、山水や詩画を自身で描いた茶碗や食器などを作り、文人的な焼き物の可能性を開いた。そして幕末期には西村(永樂)了全と保全が登場。彼らは中国陶磁の写しを模索し、その流れは明治期の永樂和全、昭和期の永樂即全へも受け継がれ、三井家と親密な交流を築きながら発展していく。
鮮やかな色彩が印象的な永樂だが、明治期に活躍した和全は、菊谷窯で民藝風とも言えるような素朴さのある作品も手がけている。粗い胎土に薄く透明釉を掛け、簡略な絵付けを施した作風からは、晩年の和全が至った境地をうかがうことができる。ちなみに、下の写真は円山応挙が鶴亀の下絵付けをした土器皿を写したものだが、応挙による原品と共に展示することで、永樂のクリエイティビティのイメージソースを知ることもできるだろう。同様に、保全や和全が写しの手本とした絵のある中国陶磁なども展示される。
同展では、絵のある陶磁器の多彩な世界に、その器形や用途、歴史的な背景などとあわせて触れることができるが、改修工事によって新たに施された館内と展示ケース内照明のLED化は、これらの名品をいっそう鮮やかに、存在感豊かに見せてくれるだろう。ぜひ足を運びたい展覧会だ。
リニューアルオープンⅠ 絵のある陶磁器 〜 仁清・乾山・永樂と東洋陶磁 〜
会場:三井記念美術館
会期:2022年4月29日〜6月26日
休館日:月(5月2日は開館)
開館時間:11:00〜16:00(入館は15:30まで)
https://www.mitsui-museum.jp/