公開日:2022年11月17日

2022年開館・リニューアルする美術館・博物館15選

今年開館・リニューアルを迎える全国のアートスペースを紹介。ミニシアターや科学館も。

大阪中之島美術館 写真提供:大阪中之島美術館

*2023年版はこちら

2022年に新たに開館、リニューアルを迎える美術館・博物館を紹介。オープンにあわせて注目の記念展を開催する施設も多いため、あわせてチェックしてほしい。

松岡美術館

松岡美術館は、実業家・松岡清次郎が自身の蒐集品をもとに設立した私立美術館。1月26日に約2年8か月ぶりに再開した。所蔵品は1800件を超え、その多くは清次郎が海外のオークションで落札したもの。1975年の開館当初は新橋にあったが、現在は白金台の松岡清次郎私邸跡地に所在する。
再開を記念する展覧会として、東洋の陶磁器、日本画、古代ギリシア・ローマの大理石彫刻の3部で構成される「再開記念展 松岡コレクションの真髄」も4月17日まで開催中だ。

住所:東京都港区白金台5-12-6
開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)、第一金曜日のみ10:00~19:00(入館は18:30まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
https://www.matsuoka-museum.jp/

大阪中之島美術館

今年もっとも注目の新設美術館といっても過言ではない大阪中之島美術館が、構想から40年を経て、2月2日に念願のオープンを迎えた。6000点を超えるコレクションは、近・現代美術から、近・現代デザイン、大阪ゆかりの国内作品など多岐にわたる。
コレクションから選び抜いた珠玉の400点をお披露目する開館記念展「Hello! Super Collection 超コレクション展 - 99のものがたり - 」の詳細はレポートからぜひチェックしてみてほしい。

住所:大阪府大阪市北区中之島4-3-1
開館時間:10:00〜17:00
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
https://nakka-art.jp/

大阪中之島美術館 写真提供:大阪中之島美術館

神戸市立博物館

1982年に市立南蛮美術館と考古館が統合するかたちで開館した神戸市立博物館は、2019年11月に大幅リニューアルオープン。昨年さらなる設備工事を行った。同館は神戸でもっとも華やかな通りのひとつとして知られる京町筋に面している。
収蔵品は主に、国宝《桜ヶ丘銅鐸・銅戈》(紀元前2世紀〜紀元後1世紀頃)をはじめとする考古・歴史資料、南蛮紅毛美術やガラス工芸品などの美術資料、古地図資料から構成される。5月8日までは「大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語」が開催している。

住所:兵庫県神戸市中央区京町24
開館時間:9:30〜17:30、金曜日・土曜日は19:30まで
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
https://www.kobecitymuseum.jp/

泉屋博古館東京

泉屋博古館東京は3月19日にリニューアルオープン。京都・東山に位置する本館に対し、リニューアルを迎える東京分館は2002年六本木に開館した。かつての財閥として知られる住友家が収集した美術品や工芸品を扱う泉屋博古館。収蔵品の多くは15代目当主の住友春翠によって収集されたものであり、青銅器を中心に絵画や仏具など3000点を超える。
先日TABでもプレオープンの様子をお届けしたが、来たる3月19日の開館からは、大阪、京都、東京の三都で活躍した画家に焦点を当てた「泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展 I 日本画トライアングル」展が開催される。

住所:東京都港区六本木1-5-1
開館時間:11:00〜18:00
休館日:毎週月曜日
http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/

泉屋博古館東京外観 写真提供:泉屋博古館東京

ヴァレーギャラリー/杉本博司ギャラリー 時の回廊

4月から開催される瀬戸内国際芸術祭に合わせて、直島内に新設されたのが「ヴァレーギャラリー」と「杉本博司ギャラリー 時の回廊」だ。3月12日にオープンを迎える。山間に建てられた「ヴァレーギャラリー」は安藤忠雄による祠がイメージされた小さな建築。天井にある隙間によって半屋外、草間彌生《ナルシスの庭》(1966/2022)と小沢剛の《スラグブッダ》(2006)が展示予定だ。
「杉本博司ギャラリー 時の回廊」は杉本博司の代表的な写真やデザイン、彫刻などを包括的に楽しめる展示施設。ギャラリー内にあるラウンジでは全国の貴重な木を使用したテーブル《三種の神樹》(2022)を囲みつつ、《硝子の茶室 聞鳥庵》(2014)をはじめとする杉本作品が楽しめる。《松林図》(2001)や《護王神社》(2002)など杉本作品が数多く点在している直島で、より豊かになった作品体験をぜひ楽しみたい。
なお、どちらのスペースも数年ごとに展示差し替えが予定されている。

住所:香川県香川郡直島町琴弾地
https://benesse-artsite.jp/

ヴァレーギャラリー 撮影:矢野勝偉
杉本博司 硝子の茶室 聞鳥庵 2014 ©️ Sugimoto Studio The work originally created for LE STANZE DEL VETRO, Venice by Pentagram Stiftung

藤田美術館

明治時代に活躍した実業家の藤田傳三郎と、息子の平太郎、徳次郎によって築かれた藤田美術館のコレクションは、明治維新を機に海外流出し、国内で粗雑に扱われる文化財や名品に危機感を覚えた傳三郎が蒐集を始めたことを発端とする。1954年、人々や研究者のために広く公開するため藤田美術館が設立された。
同館の展示室は明治から大正時代にかけて建てられた藤田家邸宅の蔵を改装して利用していたが2017年より建て替え工事に。2022年4月にリニューアルオープン予定だ。

住所:大阪市都島区網島町10番32号
http://fujita-museum.or.jp/

静岡県立美術館 

静岡県立美術館は、半年の改修工事を終え、4月2日から再開する。ロダンの彫刻から広重の浮世絵まで幅広いコレクションを誇る同館は、休館中にデジタルアーカイブを強化。再開に合わせて、オーギュスト・ロダン《地獄の門》(1880-1917)の3Dモデルと重要文化財に指定された池大雅《蘭亭曲水・龍山勝会図屏風》(1763)の超高精細画像を公開が予定されている。
本年度の企画展には、新作を含む「鴻池朋子展(仮)」や約半数が国内初公開となる「兵馬俑と古代中国 ~秦漢文明の遺産~」など魅力的な展覧会が並ぶ。「再始動」する静岡県美に注目だ。

住所:静岡県静岡市駿河区谷田53-2
開館時間:10:00〜17:30
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
https://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/

静岡県立美術館 写真提供:静岡県立美術館

不知火美術館・図書館

熊本県宇城市に所在する不知火美術館・図書館(正式名称:宇城市不知火美術館)は4月3日にリニューアルオープン。同館は1999年に開館した。北川原温が手がけた銀色のルーバーを多用した建築が印象的だ。そのコレクションは不知火からブラジルに入植した画家のマナブ間部や写真家の河野浅八、版画家の野田哲也など、宇城市ゆかりの作家作品で知られている。
リニューアル後は蔦屋書店のほか、各地で図書館の指定管理を行うカルチュア・コンビニエンス・クラブが指定管理者として企画・運営。併設する図書館内には新たにカフェもオープンする。KOSUGE1-16による、遊べる体験型作品と公募型アートプロジェクトを組み合わせた記念展「未完星[mikən-sei]」も注目したい。

住所:熊本県宇城市不知火町高良2352
開館時間:9:00〜18:00(土曜日は21:00まで)
休館日:年中無休(作品入れ替え時期を除く)
https://www.museum-library-uki.jp/

不知火美術館・図書館外観

国立西洋美術館

館内設備のため約18ヶ月にわたって全館休館していた国立西洋美術館が、4月9日にリニューアルオープンする。西洋美術を専門とする同館は、実業家・松方幸次郎のコレクションをもとに1959年に設立。ル・コルビジェが手がけた同館の建築は世界文化遺産にも指定されている。4月からは2つの小企画展「ル・コルビュジエ晩年の絵画と素描(仮称)」と「新収蔵版画コレクション展」が、6月からはリニューアルオープンの記念展「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」も開催予定だ。

住所:東京都台東区上野公園7-7
開館時間:9:30 〜 17:30(金曜日、土曜日は20:00まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
https://www.nmwa.go.jp/

国立西洋美術館(リニューアル前) 写真提供:国立西洋美術館

市立伊丹ミュージアム

4月22日、兵庫県の市立伊丹ミュージアムがグランドオープンする。旧伊丹市立美術館、旧伊丹市立工芸センター、旧伊丹市立伊丹郷町館、柿衛文庫、そして旧伊丹市立博物館を統合した文化施設。開館の記念展には「『がまくんとかえるくん誕生50周年記念』アーノルド・ローベル展」などが予定されている。
古くから酒造で知られ、文人墨客が数多く訪れた伊丹市。「酒と文化の薫るまち」を掲げる同館。伊丹市の歴史・文化・芸術の新たな発信拠点としての機能が期待される。

住所:兵庫県伊丹市宮ノ前2-5-20
開館時間:10:00〜18:00 (最終入館時間 17:30)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
https://itami-im.jp/

市立伊丹ミュージアム完成予想パース

岡山市立オリエント美術館

改修工事中の岡山市立オリエント美術館は4月22日に再開館。同館は岡山市在住の実業家、安原真二郎のコレクションが岡山市に寄贈されたことをきっかけに、1979年に開館した。館名に付された「オリエント」がラテン語で太陽が昇る方向、東方を意味し、主に中近東の考古・美術・民俗資料を専門的に収集しその数は約4700点を誇る。古代オリエントの美術品を専門とする公立美術館は国内唯一の存在だ。リニューアルに際して、トイレに中世ペルシアの絵付け技法を再現した「ラスター彩手水鉢」を設置するというユニークな見どころも。

住所:岡山県岡山市北区天神町9-31
開館時間:9:00〜17:00
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
https://www.city.okayama.jp/orientmuseum/

岡山市立オリエント美術館 内観
岡山市立オリエント美術館 外観

三井記念美術館

三井記念美術館はおよそ8ヶ月の改修工事を終え、4月29日に再開。2005年に開館した同館の収蔵品は三井家が江戸時代から収集しているもの。その数は4000点を超え、日本絵画や茶道具など国宝6点、重要文化財75点を含む。
リニューアルオープンに際して、ふたつの記念展「絵のある陶磁器 〜 仁清・乾山・永樂と東洋陶磁」(4月29日〜6月26日)、「茶の湯の陶磁器 ~“景色”を愛でる~」(7月9日〜9月19日)の開催も予定。改修により新しくLEDになった照明のもと、より展示作品を楽しむことができる。

住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7F
開館時間:11:00 〜 16:00
休館日:毎週月曜日
http://www.mitsui-museum.jp/

三井記念美術館 写真提供:三井記念美術館

島根県立美術館 

島根県立美術館は改修工事に伴う1年の休館を経て、6月1日に再開館を迎える。宍道湖のほとりにある同館のテーマは「水との調和」。約3000点を数える浮世絵コレクションのなかでも、葛飾北斎の作品は世界で唯一の貴重なものもあるなど、充実ぶりが際立つ。宍道湖は夕日が映える場所としても知られ、その絶景を館内ロビーから楽しめるよう、同館は閉館時間が日没後30分に設定されているなど嬉しい配慮も。
7月からは「チームラボ 学ぶ!未来の遊園地と、花と共に生きる動物たち」展、9月からは「祈りの仏像 出雲の地より」展が予定されている。

住所:島根県松江市袖師町1-5 
開館時間:【10月~2月】10:00~18:30【3月~9月】10:00~日没後30分(展示室への入場は閉館30分前まで)
休館日:毎週火曜日
https://www.shimane-art-museum.jp/

島根県立美術館 写真提供:島根県立美術館

岐阜県現代陶芸美術館

岐阜県立現代陶芸美術館は改修工事により9月上旬まで休館中。近現代の陶磁器を専門に扱う美術館として、2002年、多治見市内の文化複合施設セラミックパークMINO内にオープンした。作家が個人の表現として制作した「個人制作陶磁器」、生活で用いるために陶芸家が少量生産した「実用陶磁器」、量産を想定しつつデザイン性や芸術性を追求した「産業陶磁器」という3つの分類のもと、主に19世紀末以降の陶芸作品を収集を続けている。サテライトミュージアムとして各地の美術館でコレクション展を開催するなど、休館中も精力的に活動。

住所:岐阜県多治見市東町4-2-5
開館時間:10:00〜18:00 (最終入館時間 17:30)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
https://www.cpm-gifu.jp/museum/

岐阜県現代陶芸美術館 内観 写真提供:岐阜県現代陶芸美術館

静嘉堂文庫美術館

10月1日より、静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリーが丸の内に移転・オープンする。移設先は重要文化財、明治生命館の1階だ。明治生命館はもともと三菱二号館の建て替えた建築であり、静嘉堂文庫の創設者であり、三菱第二代社長でもあった岩﨑彌之助とも縁が深い。
開館記念展「静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念 響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき」(10月1日〜12月18日)では《曜変天目(稲葉天目)》(12〜13世紀)を筆頭に、所蔵する国宝7件すべての展示が予定されている。なお美術品の保管や研究は、引き続き世田谷の静嘉堂文庫で行われる。詳しくはこちらもチェック。

住所:東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F
開館時間:10:00〜16:30
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
http://www.seikado.or.jp/

静嘉堂文庫美術館 展示ギャラリー(ホワイエ)完成予想図 資料提供:竹中工務店

番外編

番外編として、美術館や博物館以外の注目の新施設を紹介する。

シモキタ - エキマエ - シネマ『K2』

演劇、バンド、サブカルなどの文化に加え、近年は再開発で施設街が続々誕生していることでも知られる東京・下北沢。「K2」はそんな下北沢にて1月にオープンしたミニシアターだ。小田急線の地下化に伴い誕生した「下北線路街」内の施設「(tefu) lounge」2階に所在する同シアター。名称はその土地の住所「北沢2丁目」からとったものだ。
「コモンズ=共有地」というコンセプトを掲げ、消費者ではなく当事者を生み出す場所を目指している同シアターは、オンラインとのハイブリット上映やファンコミュニティの立ち上げ、月刊誌の創刊など、革新的な試みを図っている。3月現在、濱口竜介『偶然と想像』などが上映中だ。

住所:東京都世田谷区北沢2-21-22 ( tefu ) lounge 2F
https://k2-cinema.com/

シモキタ - エキマエ - シネマ『K2』

スペースLABO(北九州市科学館)

「スペースLABO(北九州市科学館)」は、福岡県北九州市にあった人気テーマパーク「スペースワールド」跡地に、4月28日オープンする。イオンモールのアウトレット施設内に位置する同館は、建築をイオンモールが、内装を市が手がけている。国内最大級となる30mのドームを備えるプラネタリウムや国内最大の竜巻発生装置など、科学への好奇心をくすぐる設備が数多く用意されている。「スペースLABO」という名称は、公募によって採用されたものだ。

住所:北九州市八幡東区東田4-1-1
https://kitakyushuspacelabo.jp/

スペースLABO(北九州市科学館)完成予想図


浅見悠吾

浅見悠吾

1999年、千葉県生まれ。2021〜23年、Tokyo Art Beat エディトリアルインターン。東京工業大学大学院社会・人間科学コース在籍(伊藤亜紗研究室)。フランス・パリ在住。