新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、臨時休館を行なった全国各地の多くのミュージアム。感染防止の観点から避けるべきとされる3つの密(密閉空間、密集場所、密接場面)には、行列のできるブロックバスター展を除いて多くの展覧会が該当しないのではないかと、再開が望む声が早期から多数上がっていた。
そして5月に入り、地方の県立美術館を中心に再オープンの動きが拡大。ほぼすべての館がアルコール消毒、マスク着用などの対策を取っているなか、特に厳密な対応を行なっていると話題になったのが、5月11日に再開した大分県立美術館(OPAM)だ。
大分県立美術館(OPAM)の全対策リストは公式ウェブサイトで確認できるが、以下にその一部を紹介する。
– 入館時のサーモカメラによる体温測定
– 保健所等の行政機関による聞き取り調査等の可能性。そのため出入口を1階のみに限定し、入館時に日時・代表者氏名・連絡先電話番号・住所(市町村名)・人数を記入。フォーマットをダウンロードし、事前記入も行なえる。
– 各展示室内の同時入場者数を制限。混雑状況などは随時美術館出入口に掲示するとともに、ウェブサイトやSNSで告知
これらは、5月14日に公益財団法人日本博物館協会が発表した「博物館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」に記された、主要な項目(対来場者)を先んじて守るようなかたちとなっている。
今回、大分県立美術館(OPAM)はルールをどのように決め、再開から数日経った現在、来館者からはどのような反応があったのか。同館の館長代理・美術館管理課長の友永智男にインタビューを行なった。
──今回の対策はどのようにして決定したのでしょうか?
友永:当館の指定管理者である芸術文化スポーツ振興財団、大分県立美術館、及び施設警備受託会社と、当館を所管する大分県企画振興部芸術文化スポーツ振興課を構成メンバーとする対策会議において、対応マニュアルを作成しました。その際、大分県新型コロナウイルス感染対策本部から当面の対応方針が発出されるつど、同会議を開催し、通知内容の共有、対策の見直しを行ってまいりました。来館者様に安心してご観覧いただける環境を可能な限り提供することをゴールとしたマニュアルです。
──マニュアルを作成する際、参考にした海外のミュージアムなどの例はありますか?
友永:特にございません。
──個人情報を記入する点についてはどのような考えをお持ちでしょうか?
友永:来館者様には感染が発生した場合の来館者への確実な連絡と保険所による調査への協力のためとご理解をいただき、記入していただいております。用紙は1か月経過後にシュレッダーにて廃棄します。
──実際に再開してみて、来館者の皆様の反応はいかがでしたか?
友永:入口での検温、連絡先の記入等につきましては来館者様のご理とご協力をいただき、トラブルなく実施しております。また、「気持ちがふさぎがちなこの時期だからこそ開館を楽しみにしていた」との声もご来館者様からいただいております。そのいっぽうで、来館者様の安全はもちろん、受付スタッフの手袋着用や、来館者様向け案内文の設置など、来館者様とスタッフが可能な限り接触しないための環境整備もかかせません。
当館の「五感と出会いのミュージアム」という基本コンセプトを体現すべく、コロナ禍を乗り越え、ご来館者様と一緒に成長する美術館を目指してまいります。
現在、東京都のミュージアムの多くは臨時休館中だが、5月15日に行なわれた都の定例会見では、ミュージアムや図書館は休業要請の緩和措置のステップ0〜3の段階のうち「1」として、飲食店や劇場よりも早い段階での緩和の可能性が示された。
新型コロナウイルス発生以前のように、気軽にミュージアムを訪れることは当面難しい。多くの館が再開に進むなか、今回の大分県立美術館(OPAM)の対応は、関係者のみならず展覧会再開を待ちわびるアートファンにとっても館を訪れる際の対策の心づもりとなるはすだ。
野路千晶(編集部)
野路千晶(編集部)