2023年1月13日、美術評論家連盟(略称:美評連)は、公式ホームページ上で「岡﨑乾二郎氏《Mount Ida ─イーデーの山(少年パリスはまだ羊飼いをしている)》保存に対する要望書」の提出と公開について」を発表した。同文書は、株式会社高島屋 代表取締役社長 村田善郎と立川市長 清水庄平に向けて1月12日付で送付されている。
JR立川駅北口一帯に位置するファーレ立川には、全109点のパブリックアートが設置されているが、その一つである岡﨑乾二郎の作品が立川高島屋S.C.のリニューアル計画によって今年1月31日をもって公開を停止し、翌2月1日以降には撤去作業が進む予定。この事案に対しては、小説家で美術関連の執筆も多く手がける福永信がウェブ上などで問題提起のテキストを発表していたが、美評連の声明はそれに続くものと言えるだろう。
美評連会長である四方幸子名義で書かれた要望書では、36か国、92人の作家による109点の作品からなるファーレ立川を日本におけるパブリックアートのプロジェクトの代表例として示し、街路、照明、空調、交通標識と同じように都市の文化環境を形成するインフラの一つとして美術作品を定義した意義を主張。とくに岡﨑の作品が目指した「歩行者を誘導する形状」「植物を通して空気を浄化する仕組み」「人為的な侵入から自然を守る」などが、同プロジェクトのコンセプトの核心を体現するものであり、またギリシア神話にちなんだタイトルと造形性を有する都市彫刻としての融和性を高く評価している。
2023年1月号の『群像』に掲載された福永信「ファーレ立川の岡﨑乾二郎作品撤去とパブリックアートの未来」では、米軍基地跡の再整備として始まったファーレ立川におけるアートプロジェクトが、所有者(立川高島屋)、作家(アーティスト)、プランナー(北川フラム/アートフロントギャラリー)の三者による議論によって保存・維持の方向性を定めていくという方針があったにもかかわらず、今回の撤去問題ではその関係性が機能不全を起こしているのではないかという疑問が示されていた。
*追記(2023年1月16日)
岡﨑乾二郎による本件についてのコメント「Mount Ida─イーデーの山(少年パリスはまだ羊飼いをしている)撤去問題について」が発表された。