ミン・ウォン ライフ・オブ・イミテーション 2009 2 チャンネル・ヴィデオ・インスタレーション(HD、カラー、サウンド) 国立国際美術館蔵 © Ming Wong
大阪の国立国際美術館で特別展「ノー・バウンダリーズ」が開催される。会期は2月22日から6月1日まで。
本展は、現代社会における様々な境界(バウンダリーズ)をテーマに、私たちの日常や価値観の成り立ちを可視化し、既存の枠組みを解体し、新たな視点を提示する。国境やアイデンティティ、文化、ジェンダー、さらには美術のジャンルなどを超え、あるいは融合する現代作家の20余名が参加する。
国立国際美術館は1970年の日本万国博覧会に際して建設された万国博美術館の建物を活用し、1977年に開館。2025年4月から開催される大阪・関西万博に合わせて、本展では多様な価値観を持つ作家が「境界」を通して新たな社会のあり方を提案する。
見どころのひとつは、シンガポール生まれ、ベルリン在住のミン・ウォンによる映像作品《ライフ・オブ・イミテーション》(2009)。ヴェネチア・ビエンナーレにて高い評価を獲得した本作は、ハリウッド映画『イミテーション・オブ・ライフ』へのオマージュとして制作され、人種、映画、ジェンダーの問題を浮き彫りにし、文化的規範からの逸脱を描き出す。
多岐にわたるメディアの表現で知られる中国・成都出身のエヴェリン・タオチェン・ワンによる油彩画《トルコ人女性たちのブラックベリー》(2023)は、伝統的な中国の書画と西洋絵画技法を融合させ、ジェンダー問題や植民地史をテーマに取り上げる。
また、タイ出身のアリン・ルンジャーンの映像作品《46247596248914102516 ... そして誰もいなくなった》(2017)は、ヒトラーの最後の面会者がタイの民主化革命に関わったタイ人であったという史実と自身の家族の歴史を交差させ、時間と地理的境界を再構築している。
さらに、参加作家には、クリスチャン・ボルタンスキー、フェリックス・ゴンザレス=トレス、廣直高、鎌田友介、マイク・ケリー、キム・ボム、松井智惠、三島喜美代、ミヤギフトシ、森村泰昌、カリン・ザンダー、シンディ・シャーマン、田島美加、田中功起、ヴォルフガング・ティルマンス、エヴェリン・タオチェン・ワン、やなぎみわ、山城知佳子らが名を連ね、現代美術の最前線から多様な表現が集結する。
国立国際美術館の所蔵作品を通じて、多様性や共生の価値を見つめ直す貴重な機会となるだろう。