マレーシアのアーティスト、シュシ・スライマンの、尾道での10年間にわたる創作活動を展示する展覧会「NEW LANDSKAP ニューランドスカップ シュシ・スライマン展」が、9月16日〜11月12日に尾道市立美術館で開催中だ。
東南アジア出身の重要な現代アーティストのひとりと注目されている、シュシ・スライマン。2013年から尾道を定期的に訪れ、同町の元八百屋の廃墟を「シドラハウス」と名付けて再生してきた。タイトルの「LANDSKAP(ランドスカップ)」は、マレー語で「風景」を意味するが、アーティストの想像力は文化的な基層にも及び、「LANDSKAP」は視覚的要素だけでなく、場の来歴、さらに場に潜在する不可視なエネルギーも包括したものとなっている。
渡り鳥の到来は風景を更新させ、そして渡り鳥自身もいつしかここの風景の一部になっていく。(中略)
振り返ると一つ一つの出来事は「兆し」(マレー語でペタンダ)としてすでに現前していたのだった。
アーティストの存在がすでに忘れてしまっていたものや失われゆくものへの入り口を開いていくかのようでもある。ー展覧会紹介文より
関連イベントも充実している。シュシ・スライマンが登壇し、自身のアート活動について、活動拠点の空き家について、尾道の歴史についてなどトークが繰り広げられる。また尾道市立美術館を飛び出して、尾道旧市街斜面地に点在する会場(光明寺會舘、シドラハウス、書斎)でも作品を見ることができる。
展覧会では、アーティストと一棟のごくありふれた廃墟の出会いから始まったプロジェクトの深さと拡がりを、尾道市立美術館の空間と再生された廃屋の両方から同時に見ることができる。スライマンは「地元のコミュニティや多くのサポーターがいなければこの展覧会は実現しなかった」と語った。このプロジェクトと町を巡り、これから何が起きていくのか想像して考えてみたい。
同時開催でシュシ・スライマン個展 「fake M.」が、東京・小山登美夫ギャラリー六本木で開催中だ(9月1日〜22日 11:00〜19:00、日月祝 休)。
◎関連イベント
(全会場:尾道市立美術館 2Fロビー、参加費:無料、予約:不要)
トーク1「Fake Migration シュシ・スライマンのアート」
日時:2023年9月16日 14:00〜16:00
登壇者:
シュシ・スライマン
蔵屋 美香(横浜美術館館長)
トーク2「ORGANIZING ABANDON 空き家の再生/転生」
日時:2023年9月23日 14:00〜16:00
登壇者:
シュシ・スライマン
小野 環(尾道市立大学教授)
豊田 雅子(NPO 法人尾道空き家再生プロジェクト代表理事)
トーク3「Re-visit history 尾道の知られざる歴史」
日時:2023年10月1日14:00〜16:00
登壇者:
シュシ・スライマン
梅林 信二(尾道市立美術館学芸員)
小野 環(尾道市立大学教授)
西井 亨(尾道市遺跡発掘調査研究所所長)
*トーク開始時に土堂小学校生徒による校歌斉唱があります。
こどもと大人の鑑賞会(中学生以下対象)
日時:2023年10月8日、10月29日 両日とも14:00〜15:00
詳細:こどもたちを対象にした鑑賞会です。鑑賞資料をもとに、作品鑑賞していただけます。
※付添いの方1名は無料で入館
NEW LANDSKAP ツアー
日時:2023年9月17日、9月24日 両日とも14:00〜16:00
詳細:美術館から山手地区を歩き、シュシ・スライマンの活動サイトを巡ります。
※当日13:50に美術館前に集合