銀座8丁目のランドマークともいえる「中銀カプセルタワー」が解体される。工事は2022年4月12日から始まる。
同建築は2007年に逝去した黒川紀章が設計、1972年に竣工した。黒川らが牽引した都市の新陳代謝を促す建築運動「メタボリズム」の代表作で、鳥の巣箱のような各戸はそれぞれ独立的に設置され、部屋(カプセル)ごとに交換できるよう設計された。
計画では25年ごとに交換され刷新されるはずだったが、一部のみの交換が難しく実施にはいたらなかった。だが、戦後日本の急激な人口増加、高度経済成長の時代精神を反映するメタボリズムを体現するコンセプトと造形は高く評価され、近年は観光客が訪ねる人気スポットとしても知られていた。
居住空間としての人気も高く、クリエイターや建築ファンらが各戸を思い思いにカスタマイズし暮らしていたが、今年3月13日に居住者は完全退去。竣工から50年目を迎えた今年、解体されることが決定していた。
解体後の各カプセルには世界各地の美術館などから譲渡を希望するオファーが届いており、「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」と黒川紀章建築都市設計事務所が協議して譲渡先を決定していく予定だ。建物としてのカプセルタワービルを見られる期間はもはや限られているが、ある時代の建築思想を体現した空間の一部は、その歴史とともに世界中で愛され続ける。