Tokyo Art Beatは、2023年11月に2週間にわたり「子連れ美術鑑賞についてのアンケート」をオンラインで実施し、読者の意見や体験、エピソードを募った。
期間中に寄せられた有効回答は701人。今回のアンケートはデータの収集・分析を目的とする調査ではないが、おおよその傾向は把握できた。それぞれの質問項目ごとの概要と回答者から寄せられたコメントを抜粋して紹介しよう。
なお、コメント文末のカッコ内は回答者ネーム、匿名希望は匿名、無記名は表記なしとした。
(質問全文)身近に子供がいる場合、美術館に一緒に行ったことがありますか? ある場合はなぜ一緒に美術館に行こうと思ったか、ない場合はなぜ行かないか、それぞれの理由も教えてください。
自分の子供などと「美術館に一緒に行ったことがある」は、回答の半数以上を占めた。
理由としては、以下のような積極的な意見が目立った。
子供が芸術に触れるのは当然の営み(匿名)
素晴らしい美術を、子供の先入観のない感性で感じてもらいたかった(あやなの)
子どもの頃から鑑賞することの喜びを知ってほしい(野中ひとみ)
美術館はどんな人にも開かれた場所(匿名)
また、「妊娠前から美術館に行くことが生活の一部で、美術館が特別なものと思っていない(匿名)」「元々美術館へ行く習慣があり、『一緒に行く』のが自然な流れ(ショミー)」など元々の習慣を継続しているという回答、月に一度、赤ちゃん優先dayがあったので(架空のことなら)」「子どもが小学校低学年を過ぎてから。それまではチョロチョロしてしまうので行けなかった(三日月)」のように条件付きで訪れている事例もあった。
一緒に連れて行く事情を伝える回答も。
シングルマザーなので、家に子どもをひとり残して行けない(青虫研究所)
2時間おきに授乳が必要で離れられなかった(匿名)
見たい展覧会、作品があり、子供の預け先がなかったため(コマイ)
子供の年齢は以下のコメントなど乳児から小学生まで幅があった。
「0歳の頃から月に1、2度ほど美術館に連れて行きます(匿名)」「0歳半の頃から頻繁に一緒に行っています(lessismore)」「小学校5年生の時が最初で、絵を描くのが好きな子だったから(大澤夏美)」
また「岸田劉生展のポスターを見て本人が行きたいと言った(匿名)」「息子がEテレの『びじゅチューン!』が好き(りーひら)」等、子供の関心をきっかけに美術館に出かけた例もあった。
子供の加齢に伴う問題を指摘する回答も寄せられた。
子どもが0歳の時、ベビーカーや抱っこ紐を使用して美術館やギャラリーに10回以上行った。子供が歩き出した頃、展示室内で走り回って作品を触ろうとしたり、大きな声を出したりしたため行けなくなった(たまお)
子供が0~1歳の頃、3回ほどベビーカーで連れて行った。国立新美術館の託児サービスをおもに利用した。(託児できない年齢になり)5歳の現在まで一緒に行っていない(鈴木一馬)
全体の4割強が子供と一緒に「行ったことはない」または無回答で、これは身近に子供自体がいないケースも含まれる。
目立ったのは、ほかの鑑賞者に対する遠慮や危惧のため行かないという回答だ。
小さな子供の泣く声や走り回る様は作品鑑賞の邪魔になる
(子供が)騒ぎ出したらと思うと心理的ハードルが高い(匿名)
学芸員や他の人からの冷ややかな目や、実際に注意されるのが怖かった(ハム)
(SNS等での)バッシングが怖い
アンチ子連れの迫害に遭いそうで、行こうと思えません(匿名)
子連れで美術館を訪れる困難や負荷を行かない理由に挙げる回答も多かった。
美術館まで行くのが大変。展示品を満足に見れずチケット代が無駄になりそう(匿名)
ずっと抱っこせざるを得ず、重い(匿名)
(子供が)騒がないか、走らないか、ぶつからないか等を考えていたら鑑賞どころではない(匿名)
美術館の鑑賞環境を理由に挙げた回答も複数あった。
兎にも角にも静かでなければならないという雰囲気で子が楽しめるとは思えない(凪)
べビーカーNGのところばかり(匿名)
有名な絵画展だと人が多く、子どもがのんびり過ごせない
また、子供の美術鑑賞や美術館訪問自体に疑問を呈したり否定したりする意見も見られた。
子供の視力は弱いため美術を鑑賞するのに適さない
美術館は大人が楽しむための空間
情操教育を目的に連れていくのは分かるが、効果が疑問。子供が興味を持つとは期待できない(はらへりり)
(質問全文)子連れで美術館に行き、注意を受けて嫌な思いをしたり、窮屈さを感じたりしたことはありますか? ある場合は、具体的なエピソードを教えてください。(同伴していたお子さんの人数、年齢も差し支えない範囲でお教えください)
嫌な思いや窮屈さを感じたことが「ある」と回答した人は全体の3割弱、「ない」は3割超、残りは無回答もしくはどちらとも判断できなかった。
「ある」とした回答には、暴力被害を含む体験談が含まれていた。
(子供は)5歳1人。うるさいと突然女に引っぱたかれた。子供が泣くと更に殴り付けようとし、止めた私は鉛筆で刺された。女は逮捕。私は入院した(匿名)
私自身が子どもだった頃(小学校低学年だったと思います)、黙って(もしかしたら質問程度の会話は親子でしたかもしれませんが)拝観していたにも関わらず、他の鑑賞者から見えないところで足を引っ掛けられたりパンフレットでぶたれたりした(匿名)
抱っこ紐に赤ちゃんを入れ比較的密集した展覧会を監守した際、鑑賞者の中に遠慮なくぶつかってくる人がいた(匿名)
嫌な思いなどをした要因として挙げられたのは、ほかの鑑賞者の言動が多かった。寄せられた体験談の一部を列記する。
ベビーカーに乗せて展覧会を見て回っていたら、近くにいた60〜70代くらいの女性に「こんなところに連れてくるのはかわいそうだ」「交代でどこかで子守しろ」と言われた(匿名)
1歳の子どもを抱っこひもに入れて鑑賞していた。子どもがグズるほどではなく声を出したら、見知らぬ男性から「美術館は子どもを連れてくるところじゃない、出て行け」と言われた(匿名)
写真撮影可の場で子供と作品の写真を撮っていたら「写真を撮るな」と見知らぬ男性にいきなり怒られた(Seina Morisako)
美術館スタッフ(監視員等)の対応を原因に挙げた回答も目立った。
きちんと手を繋いで静かに観ているのに、終始スタッフが後ろを付け回してきて不快な思いをした(susu.)
10歳と6歳。作品のタイトルを声に出して読んだらスタッフに他の方に迷惑になると注意を受けた(匿名)
子どもは4歳と6歳。ひどい時は監視員がはりついてまわる(富永)
ガラスで囲われていない彫刻に近づこうとしたところ、そばにいた女性スタッフに「触らないでください!」とキツイ口調で言われた。少し近づいただけで触ろうともしていなかったのに。それ以来、一度も子供と美術館へは行っていない(匿名)
チケットを買うときに『お子様が騒いだら出て行ってもらいます』と言われたのがショックだった(匿名)」
次の展示室に進むごとに、監視員さんが『幼児連れのお客様が……』と情報共有しているのがプレッシャーだった(匿名)
嫌な経験は「ない」とした回答では、訪れた美術館名や対応のされ方、展覧会の種類を具体的に示したケースがあった。
国立西洋美術館で警備員の方が子供に手を振ってくださったり、学芸員の方に『ごゆっくりご覧ください』と声をかけていただいたりして、涙が出るほど嬉しかった(匿名)
(0歳児と一緒に)行ったことのある美術館(三菱一号館美術館、東京都美術館、国立新美術館)は子連れに親切だった(匿名)
子供が作品に手を触れそうになってしまい、注意を受けたが、優しい言い方をしてくださったので嫌な思いはしなかった(匿名)
現代美術系は比較的おおらかな空気感なので、連れて行きやすいが、古典系?はピリピリしている印象(匿名)
子供への事前注意や一緒に鑑賞する際の心がけが奏功しているとする回答も寄せられた。
当時5歳と3歳。約束ごとが出来るようになってから連れていったのと、子どもたちが初めての場所では緊張して大人しくなってしまうタイプだったのもあってか、嫌な思いをしたことはない(en)
泣いたり騒いだりしたときは、急いで廊下や広場に移動する
必ず手をつなぐなどの対応をしている(学芸員のたまご)
(質問全文)子連れで美術鑑賞をする人を迷惑だと思ったことはありますか?あるいは何を迷惑だと思いますか?ある場合は、具体的なエピソードを教えてください。
子連れの美術鑑賞を迷惑だと「思ったことはない」は全体の4割を超え、「思ったことがある」の3割超を上回った。
「思ったことはない」の回答で目立つのは、美術館の公共性や子供が美術に親しめる環境づくりの重要性を強調する意見だ。
迷惑とか思うほうが間違いだと思う、公共の場とはそういうもの(匿名)
美術館が開けた空間であるように感じられるので、(子連れ来館は)とても嬉しい(はらへりり)
芸術は大人にしかわからないものではなく、小さな子供であってもそれぞれ何か感じているはず(れい)
私は展示をする立場だが、子連れの方が来てくれると『嬉しいなぁ、ありがたいなあ』といつも思う
現行の鑑賞マナーや美術館内でのルール自体に疑問を呈する意見も。
そもそもなぜ美術館で静かにしないといけないんですかね。館側や来館者が美術鑑賞を高尚なものだとでも勘違いしているのでは?靴音やシャッター音にまで気を配るとか、異常だと思う
日本の美術館の厳しすぎるルールが迷惑というか窮屈だと感じる。海外では館内でイーゼルをたてて絵を描く人もいたり、もっと自由(匿名)
(美術館が)静かすぎる、厳粛すぎる、狭量さに疲れを感じる(コマイ)
子供や子連れへの理解や寛容さを求める意見も寄せられた。
好奇心旺盛な子供だからこそ、美術に触れさせてあげて、多少はしゃいだとしても許容してあげることが大人の役割だと思う(大学にいさん)
自身も子連れ鑑賞をしているのでお互い様という気持ち(子どもは誰でも芸術家)
親も日々子育てで大変。少しの息抜きすら許されない社会なんて息苦しすぎる(NZA)
迷惑だと感じた経験が「ある」とした回答は、子供や付き添う保護者の鑑賞マナーや行動を理由に挙げたものが圧倒的に多かった。具体的なコメントは以下の通り。
(展覧会を)予約して高いチケットを買ったのに、ずっと大きな声で泣いてる子がいて本当に嫌だった(うさぎさん)
美術館でスーパーボールのようなものを投げて遊んでいる子どもがいた
展覧会場で子供を肩車して歩いている父親を見た
子供が作品のガラスケースを手で何度も叩いていた
導線を守らない(ゆうこ)
「外で遊びたい!」と泣き叫ぶ子供を引きとめて観賞している親
子供が大人しく鑑賞していても、親が『これはなんだろうね?どう思う?』と大きな声で話しかける
親が抱きかかえた際、子供の靴が周りに触れる
子供の行動による、作品破損や他の鑑賞者が怪我する恐れを挙げた回答も目立った。
企画展の絵画はほとんどが借り物。万が一子供の粗相があったときに責任は親が取ればいいが、積み上げてきた学芸員さん達の信用はガタ落ちになって日本への貸し出しが難しくなる(都田)
足音を立てて走り回る。ルールが守れず作品に近づきすぎる。作品を傷付ける可能性がある(kazuki ogata)
足と目が不自由な障害者と行ったが、薄暗い中を子供が走り回り大変危険だった(匿名)
子供は背が低いのと動きが予測しづらいので、薄暗い展示室内では存在に気がつくのが遅れてぶつかりそうになる(匿名)
(質問全文)子連れで美術館に行く際に、難しさやハードルだと感じるものはありますか?
「難しさやハードルだと感じるものがある」の回答が半数以上を占め、「未回答、どちらとも言えない」は3割、「感じたことはない」と明示する回答は0.6割程度にどとどまった。
難しさやハードルの点でもっとも回答が多かったのは、周囲の鑑賞者や監視員の目が気になる、そして美術館は静かすぎるという意見。
他者の視線だと思います。これは美術館に限ったことではないですが(匿名)
とにかく露骨に警戒される(匿名)
無言無音であれという圧力(匿名)
日本の美術館は余りにも静かすぎて、元気なタイプの子どもだと気が引ける。
日本では美術館は静かに観賞するものだとの認識が一般的であろうと思いますので子どもは不向きです。相当根強いと思います(匿名)
子供が騒いだ際に美術館に一旦避難できるような場がないと言う意見も目立った。
ぐずった場合すぐに避難できる休憩場所が少ない、あるいは避難ルートが限られていて、展示室入り口まで抱き抱えながらたびたび走ることになる(匿名)
抱っこやベビーカーの時はまだ行きやすかったですが、子どもが自由に動き回る年齢になってきて美術鑑賞の難易度があがりました。作品を触ろうとしたり、飽きてくるとぐずったり騒いだりするので、先日も展示室をスルーしてほとんど見ずに出てきました。一旦休憩したり何か食べさせてから再入場できるとありがたいんですが、それもできずその日はチケットを無駄にしたと感じてしまいました。しばらくは無理に通常の展覧会に連れて行くのはやめようと思っています(匿名)
また、「難しさやハードルを感じたことがない」という意見の中には、そもそも美術館に連れて行かないという意見が大半を占めた。
子連れでは行かないので感じません
美術館は、通常は小さい子を連れて行く場所ではないという認識のため、難しさは感じません(1歳児の母)
子どもの発達にあった展覧会を選べば良い、と思う。もし、静寂を要する展覧会に行くなら、年齢に応じて断念すべき場合があるのは当然(おかし)
また、以前は気にならなかったが最近周囲の目が気になるようになったという声も。
普通の声の大きさで会話ができない場所に子どもを連れていくのは申し訳ないかもと思うようになった。大人の暗黙の了解が理解・実行できないうちは子どもで、マナーに乗れないなら美術館には連れて行かない方が良いのかもしれない。でも、そんな状況を作ってしまう美術館のハードルは本当に必要なのだろうか、、とも思う(匿名)
今まで感じていなかったけれど、最近SNSの投稿を見て子連れで行くのは迷惑だったかもと思って今後は躊躇してしまう(匿名)
(質問全文)子連れで美術館に行き、美術館の対応や設備、制度で良かった例があれば具体的なエピソードを教えてください。(同伴していたお子さんの人数、年齢も差し支えない範囲でお教えください)
対応、制度が良かった館として多く名前が挙がったのは東京都美術館、東京都現代美術館、国立新美術館、千葉市美術館、府中市美術館、森美術館の6館。
なかでも東京都美術館、国立新美術館、府中市美術館については、スタッフの対応についての回答が複数寄せられた。
東京都美術館に行った際、体験型のインスタレーションだったこともあり、監視員の方が積極的に子供に話しかけてくれたり手伝ってくれたりしました。また3歳の子どもが飽きて1人でベンチに座っていた時も、気にかけて話しかけてくれてありがたかったです(匿名)
国立新美術館は、2、3歳頃の子供が泣いて展示室から出たら、すぐに再入場券を手渡して下さり、今日中ならいつでも再入場できますから、と親切に対応していただきました(とかげ)
府中市美術館はいつ行っても子供に優しく、ベビーカーで行くとエレベーターを案内してくださった。確か昨年の夏の展示では子供たちに作品を守るミッションのように美術館のマナーを教えてくれ、小1の子供が真剣な眼差しで聞いて、集中して鑑賞していた(匿名)
制度としては、東京都現代美術館については離乳食を無料提供するカフェ「100本のスプーン」やベビーカー貸出サービス、千葉市美術館は無料託児サービスデー、森美術館は開館前の美術館を貸し切る子連れ歓迎時間「おやこでアート」の取り組みに好意的な反応が寄せられた。
千葉市美術館では企画展ごとに無料の託児サービスデーを実施してくださっているので、抽選に当たったときは利用させていただいています。本当に素晴らしいサービスです、預け先がない我が家にとってはいつも感謝しかありません(ショーン)
そのほかに名前が挙がったのは、国立西洋美術館、八戸市美術館、彫刻の森美術館、神戸市立小磯記念美術館、戸田幸四郎絵本美術館、PLAY! MUSEUM、岐阜県美術館、MOA美術館、金沢21世紀美術館、福岡アジア美術館、熊本市現代美術館、広島市現代美術館、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館など。
美術館に期待される取り組みとして目立ったのは、託児サービス、再入場券、子供向けのルール解説、バリアフリーなど。託児サービスについては上述の千葉市美術館のほか、国立新美術館、横須賀美術館、山口情報芸術センター[YCAM]、横浜市民ギャラリーあざみ野での利用体験談が寄せられた。
また上記のような具体的な取り組み以前に、「多くは望まないので歓迎ムードあるだけでありがたい」という意見も。
スタッフの方がにこやかに対応してくれるだけでだいぶありがたいです…(匿名)
子連れだからといって、警戒されている感じがあるとプレッシャーを感じるが、子供を歓迎してくれる雰囲気があるだけでも少し気持ちが和む(匿名)
子供を連れていることに対して、ごく自然に好意的な対応を取ってくださることが一番親にとってはありがたいです(匿名)
また前提として、「美術館は清潔で子連れにも安心できる場所」という意見も複数あった。
美術館は、実は赤ちゃんを安心して連れて行けるな!と思っています。オムツ交換の場所もとても使いやすく綺麗なところが多いですし、東京都現代美術館のレストランは離乳食を無料で提供してくれます。いま現在、こどもは4歳になり展覧会によっては作品を触れたり、ワークショップに参加できたりできると、とても楽しんでいます(水カステラ)
生後3ヶ月頃から結果的に月一くらいの頻度で、美術館、博物館、ギャラリーなどを訪れていますが、どこもとても良くして貰ったと感じています。 どこの施設も、オムツ替えや授乳スペースが清潔にメンテナンスしてあるのがとても嬉しいです(匿名)
(質問全文)子連れ美術鑑賞について、海外で経験したエピソードや事例があれば教えてください。
海外の美術館での経験が多数寄せられた。多かったのは、日本の美術館に比べ静寂が求められず、子供とも過ごしやすいという意見だ。
ピカソ美術館、ルーブル美術館、プラド美術館などに行きましたが子連れに対して特に厳しい目はありませんでした。そもそも無音ではなくざわついている印象で、日本で言えば科学館のように子どもたちが積極的に鑑賞していることに感銘を受けました(susu.)
メトロポリタン美術館のガヤガヤ感は心地よかった(匿名)
アメリカグッゲンハイム美術館、またパリのポンピドゥーセンターに行ったとき。会話や、通話をふつうにできる、騒がしい。誰でも居心地がいいように感じた。小さい子供が床に座り込んだりしていても誰も何も文句を言わない。監視されてない。7歳、11歳(コマイ)
小学生くらいの子どもが「I love this color!」って素直に言ってるのをアメリカのMOCAで観た時、あのくらいのカジュアルさで日本の大人も子どもも感想を喋ったらいいのになーと思いました(ムロタマユ)
【Q5】と同様、スタッフによる歓迎ムード、子供にとって居心地のいい設備などに関するコメントも多数寄せられた。
ゴールドコーストのHOTAは、子どもが一緒に来ること前提のような作りで、設備が子ども向けになっていたり子ども向けの部屋があり楽しかったです。子ども向けの部屋では、自由に絵を描いたり変わったブロックで遊べたり、素直に子どもがアートに親しめる仕組みになっていました(匿名)
ハワイの美術館で、ベビーカーの子どもが泣いても笑って「心配しないで、子どもはなくもの。」と声をかけてくれた方がおり、救われました(匿名)
当時5歳と8歳の二人の子供を連れてヴェネチア・ビエンナーレに行った際、日本館の現地スタッフがとても親切に動線を確保してくれたこと。トイレなどで困っているときに丁寧に案内してくれたこと。他にもイタリアやスイスの美術館、博物館で子供を連れて鑑賞する客にスタッフや他の客も自然な配慮があってとても居心地が良かったことを覚えています。何よりも他の客が子どもを連れて鑑賞する方を歓迎する空気が大切だと感じます(匿名)
親子連れに限らず、学校などで学習の一環として美術館が活用されている事例も多いようだ。また子供向けツアー、スタジオビジットといった工夫を凝らした取り組みについてもコメントが寄せられた。
色々な美術館へ行ったが、騒ぐこともなく親と話をしたり引率の先生とディベートをしていたりと楽しそうだった。アートは皆の共有財産という感じを受けた(凪)
オーストリアで国立博物館に行った際、子どもがスケッチをしたり子ども同士で話し合ったりしながら展示を見ていました。そういった場所でスケッチをしている人は、日本ではまず見かけないので、美術にもっと気軽に触れて愛着を持てるのはいいなあと思いました(匿名)
東南アジアに9年いたのでエピソードは多すぎですが、シンガポールのナショナルギャラリーの子供ツアーが男女で漫才形式だったのはとても面白かったです(Seina Morisako)
あるアメリカの美術館ではアーティストのスタジオビジットも展開していたので、それは子どもにとっても面白いビジットになるだろうなと思いました(匿名)
ルーヴル・ランスでは子連れで作品の横でヨガをやっている光景に羨ましさを感じた(一般開館時間)(匿名)
いっぽうで、海外の美術館で子供を見かけたことがないといったコメントも数件寄せられた。
(質問全文)子連れ美術鑑賞について、美術館への要望があれば教えてください。
この質問に関しては、子供との美術鑑賞をしたい人や歓迎する人、また歓迎しない人など様々な立場から要望が寄せられた。
まず多かったのは、館内での監視スタッフとのやりとりに関する要望だ。とくに子供を連れた保護者から次のようなコメントがあった。
子連れを注意することがあるのは仕方ないと思うが、子どもや親が不快にならないような言い方や態度をスタッフに指導してほしい。いちどトラウマになるとリピートしなくなるから(匿名)
作品に害がある行動や、人にぶつかったりなど危険な行動はもちろん親も制止しますが、作品や美術館に関しての会話などは大目にみてほしいです。最近SNSで、美術館は静かに鑑賞する所だから子供と会話しながらの鑑賞は迷惑という意見を多数見ました。それだと興味を持つ事は難しいし、美術鑑賞や美術館に行く事がつまらない体験になってしまうと思います(匿名)
執拗に注意してくる高齢者から守って欲しい。本当に怖い。静かに見ていても、ちょっと声を出しただけで睨んでくるし、出ていけと言われる(匿名)
「手をつないでください」と注意を受けて無理に手を繋ごうとすると癇癪を起こしてしまいすぐに出ていかなければいけない状況になることもあります。小さい子供でも白い線の中に入らないでね、触らないでね、走らないでねと注意されればわかる子もいます。「小さい子供だから」という理由だけで同じように注意するのではなく、状況を見てもう少し対応にゆとりを持っていただけるととても嬉しいです(匿名)
上記のようなトラブルを防ぐためにも、美術館に子供の鑑賞に関する姿勢やポリシーの明示や、ルールを明確化してほしいという意見が多数上がった。
美術館はこどもからお年寄りまでみんな来ていいと掲示を出して欲しい(匿名)
美術館としてのステートメントを打ち出してほしいです。子連れ来館者ウェルカムなのか、そうじゃないのか、館として一枚岩でやっていかないととは思います(大澤夏美)
大人と同様に、静かに鑑賞する、決められたルールを守る、周囲に迷惑をかけない、といったことができない場合は、一時退室を促す、休憩室を案内する等の対応をしてほしい。また、その内容をホームページ等で告知してほしい
禁止行為を明確にせず、マナーは良識の範囲で…と曖昧さを持たせると結局親は子に最大限に我慢させなければならない空気が出ますし、これまでと変わりません。人によって良識の範囲に大きな差が出ることでトラブルにも繋がります。子連れが行けるために緩める部分、締める部分はどちらも明確な提示が必要です(匿名)
撮影禁止、接触禁止などと同じタイミングで、『お子様連れの場合は手をつないでください』『走らないでください』など、『事前』の指示を明確に『具体的に』するべきと考えています。美術館は全年齢を受け入れる教育機関でもあります。決して子どもだからと受入に難色を示すべきではありません。判断能力がないのは子どもに限りません。老人や大人でもありえます。全年齢に対応できる注意事項を練るべきです。マナーといった感情論に持っていってしまうと、客側も感情的になり、いずれ失敗します。冷静なルール作りが行われるべきと考えます。美術館の狭量な対応は客の狭量さを引きおこし、やがて衰退にもつながります。美術館側がマナーなどといったものではなくルールを明確に打ち出せば、客はそれに従います。この議論をマナーなどといった感情論に持っていってほしくありません。本来なら『接触禁止』だけでいいはずですので、もぎり等の際に念押しするなどそこを徹底すべきかなという気がします(学芸員のたまご)
具体的な取り組みの案として、子供や親子での鑑賞のための時間や、逆に静かに鑑賞を楽しみたい人向けの時間をもうけてほしいという意見や、実際にそうした取り組みをしている美術館へ足を運んだ体験談も寄せられた。
「子連れ向けの鑑賞日」および「子どもと鑑賞する際のマナー講座」のような場を設けてほしい。
小さな子どもの走り回る動きや泣き声・叫び声が苦手なので、騒音を気にすることなく芸術鑑賞に集中したい(匿名)
絶対に未就学児禁止にして欲しい。または大人だけの時間を作って欲しい。需要は多いと思います!(匿名)
映画の応援上映のように、静かに鑑賞しなくてもいい日を試験的に設けてみて欲しい(匿名)
会期中に『子ども中心の日』を設けて親や友達と感想を話しながら見れるようにしたら面白いのでは。子どもの素直な意見を大人も聞いてみたい(匿名)
1日に1回ぐらい『サイレントタイム』とでも名付けて、静かに鑑賞する時間帯を設けてはいかがでしょう。それがなかなか叶いそうもない客層の美術館なら、時間制で何時から何時までは自由に声出していいしお子様大歓迎!という時間帯を作ってはどうでしょう。ただそうなると、その時間帯以外は子連れが来にくくなると思うので、できればサイレントタイムの方を時間限定で設けてほしいところです。曜日限定だと、行けるタイミングがなかなか作れないママ達にはハードルが高すぎると思います(匿名)
各美術館、夏休みに限らずキッズデーを設定して欲しい。学芸員によるお話などあると、より印象深く作品に親しみが湧く体験になると思う。6歳の娘がこの夏サントリー美術館のキッズイベントで、美術館設備についてお話を伺う機会があり、しばらく美術品と照明の関係にハマっていました(Ondina)
国立近代美術館で子どもの鑑賞デーがありましたが、長蛇の列で入場までに1時間並ぶと言われたので現地まで行って諦めました。3歳の子が1時間並んで待つのは無理ですから…。つまりそれだけ美術館に行きたい、普段は我慢している親子がたくさんいるということです(匿名)
岩手県立美術館では毎月子連れ鑑賞の日を設けています。お子様連れの方が多くいらっしゃるので気兼ねなく鑑賞できてとても良い試みだと思っています。小さなうちから美術に親しむことをとても大事だと考えています。一流のものをお金持ちだけでなく一般庶民が見ることができる、これこそが文化を大事にする国のあり方です。美術を一部の人のものだけにせず、他人と自分の感じ方、見え方、表現の違いに触れてただ一人の自分を表出してゆく方法を知る一助とする、そういう経験が積めるのが美術館かな、と感じております(AKI.B)
また静かさを求める鑑賞者への以下のような対応策も上がった。
足音や感想をつぶやくだけでも注意するような環境にしないでほしい。静けさがほしい人にはノイズキャンセリングイヤホンの貸出をするなどしてほしい(みずの)
子供目線での作品の配置や動線、再入場についても意見が多かった。
子供の目線でもみれるような展示方法や、触ってもいいエリア、ワークショップなど(匿名)
ベビーカーの貸し出しサービスはありがたいが、B型ベビーカーは座面が低く展示がよく見えないので、スーパーなどにある二カ月から乗れるカートを貸し出すのはいかがでしょう? 大人の高さに合わせた展示は、小学校低学年くらいまでは本当に見にくいので、踏み台の貸し出しや持ち込みを許して欲しいです。今はコンパクトなのがいろいろあるので(あでり)
混んでる展覧会で、前の方で見られる、子ども専用レーンのようなものがあるといいなと思います(匿名)
小学生くらいになると、手引き次第ではかなり楽しめるようになるので子供用のオーディオガイドがあると嬉しいです。子供と言っても年齢で全然違いますが小学生以上向けというくらいで…。いかにも『子供向け!』という楽しいものが欲しいわけではありません。言葉を少し噛み砕いたものにするだけでわかりやすくなります。こういうのが好きだろう?と大人が考えすぎる必要はないと思います(しほ)
子どもが今より小さい頃に(幼児くらい)、美術館はこういうところだよツアーがあったら気軽に行けたかなと思います。美術館で作品鑑賞しながら、こうやって過ごすんだよとマナーも学べるような。好きに見てほしい反面、全ての人が楽しむために、やはりある程度のマナーは必要だと思うからです(三日月)
再入場可能にして欲しいです。こどもがぐずっても、ジュースを飲ませたら落ち着く場合もあるので、休憩を挟んで再チャレンジしたい時があります。こどもが嫌だと思う人も時間を空けて自分の良いタイミングで入ることができるかもしれません(ほっしー)
お化け屋敷のリタイア口のようにルート途中で抜けられて、また戻ってこれたりするような巡回ルートだと良いのかなとたまに思います。展示がフロアにまたがる場合、それができてそこで一度落ち着きを取り戻されてるお子さんを見かけたこともあります(すずき)
子供は何かを渡すと、少しトーンダウンできるので、展示作品のシールやカードなど何か子どもが手に持って歩けるものがあると嬉しいです(優子)
各フロアの展示室の外に休憩スペースがあると良いと思います。また、自身が子供時代に感じていたこととして、この作品はどうやって描かれているのかしら。どんな文化やストーリーがはいけいにあるのかしら。などと、大人が考えるようなことも子供は意外と考えているので、侮らずに子供向けの解説や、どういった技法が使われているかなどを出してくれると、もっと美術が身近になると思います(あきら)
子供たちをどうお行儀よく、静かに鑑賞させるか、ではなく、子供がより作品を楽しめる工夫があるといいと思います。子供向けに作品や作者を紹介したものがあると嬉しいです。掲示してあるものに、読み仮名をふってくださるだけでも、効果はあると思います(匿名)
施設のバリアフリー化や託児施設を備えてほしいという要望や、アクセシビリティに関する情報を事前にわかるようにしてほしいという要望もあった。
作品の展示されている部屋が暗い場合、子どもが怖がって泣いてしまうことが考えられます。ですから、部屋を暗くして作品だけをライトアップしているのか、普通の部屋と同様の明るさなのか、予めホームページなどに記載があったら安心です。またベビーカー通行可否もホームページなどに記載があると嬉しいです。ベビーカーが通れない場合は、ベビーカー置き場と抱っこ紐の貸し出しがあったらいいのではないでしょうか(匿名)
先日、現代美術館にデヴィッドホックニー展を(単独で)見に行きましたが、特別展内のトイレが少なく、トイレの水量が少なすぎて流れず、そのため回転がものすごく悪く、さらにそんなトイレに、オムツ替えシートが、あろうことか、女性トイレの、さらに個室の中に一つという子連れには地獄のような設計で、リニューアルされたばっかりなのに前近代的だと大変残念に思いました。速やかに改善が必要かと思います(匿名)
有料でもいいので託児サービスを常備してほしい。子に対して高圧的な絡み方をする迷惑客に対して毅然とした対応を取ってほしい(匿名)
子連れでの美術館訪問は食事をどうするかも懸念点となる。食事についてもいくつか意見が寄せられた。
ミュージアムカフェのキャパシティが増えると利用しやすい(匿名)
もし子供連れもターゲットに考えているようであれば、授乳室、オムツ台、レストランメニューにキッズ向かのものがある、子供のための作品を理解する手引きなどのいずれかがあると、子供を連れて行っていいんだなという目安になると思います。またレストランにキッズメニューがなくても、お庭の一角で持参したお弁当などがゆっくり食べれるスペースがあると、わざわざお昼のために街の子連れ向けレストランなどを探す手間が省けてありがたいです(匿名)
周辺施設さまにおかれましても、幼児の食事可能な椅子やメニューをご用意いただきたく!(匿名)
自由記述欄から、いくつかの声を紹介したい。本アンケートには子供の有無に限らず、美術鑑賞という時間を大切に過ごしたいという思いが感じられる様々な意見が寄せられた。
妊娠~乳児育児は孤独で、自分の好きなことがほとんど制限されます。この中で美術鑑賞は数少ない大切な息抜きの時間であり、また、自分自身の人生の時間を、わずかな時間で大いに過ごすことができる経験です。親になっても、好きなものをしっかりと見に行くことがこれからもできますように(匿名)
このアンケートを見つけただけで嬉しくなったのは、本当は美術館もっと行きたいけど迷惑だと思われるかもと萎縮しながらの鑑賞は…と感じているから。ほかの鑑賞者に迷惑がられるかはわからないですが現社会がそうなので強気にはなれず…そんなフラストレーションを美術館側から『来てください!』って言ってもらえるだけで我々はだいぶ安心します(匿名)」
子連れで美術鑑賞をしたい方々と、そうではない人たちとの間に、美術館で鑑賞する際のルールに違いはないはずです。子供だから騒いで周囲の鑑賞を妨げていいわけではない。それを保護者が配慮できない場合があるのはとても嫌です。展示内容にもよりますが、大人に求めるのと同様に子連れ鑑賞にも最低限の譲り合い、配慮を求めるべきだと思う。子連れではない人が譲歩して成り立っていることが多いのではないかと思う。それも社会参加の一部だとは思いますが、美術館利用者としては同等のはずで、全力で目の前の作品を楽しみたいのにそれを関係のない子供に阻害されるのは不満です。問題なのは子供ではなく、その保護者です。あえて子連れ鑑賞を推進すると、ルールを破ってよいと勘違いする人が増えそうで不安です
忙しい中来館する人、人生に悩んで生きる希望を見出すために来た青少年もいるので、あまり楽しめない年齢で騒ぐ泣くぐずる年齢の子供の美術館来館は推奨しないで欲しい。真剣に芸術に向き合う人が最優先、それを邪魔するような子連れ来館は勧めないで欲しい(匿名)
また、都市部と地方における格差や、機会の平等を求める声もあった。
企業CSR担当をしているワーママとしての意見です。 子連れ美術鑑賞の環境については、都市と地方の格差が大きいように思います。都内には美術館が多くアクセスもよく、子供にも魅力的なわかりやすい有名作品の展示が多いため子連れで美術館に行く気も起きますが、美術館までが遠いとそもそもアクセス自体が困難ですし、馴染みのない作品だと子供自身が行きたがることも少ないと思います。 機会平等への貢献はCSRのトレンドですので、企業寄付の力で現在美術館へのアクセスが悪い地域に住む子供達にも、良い美術鑑賞の機会が作れる仕組みができればな、と思います。小学校へ作品と解説員が訪問するとか(Ondina)
子どもが生まれるまでは夫婦で開館から閉館まで美術館や博物館にいるような感じで楽しんでいましたがぱったり困難になりました。地方なこと金銭的なこと子どもの特性的なことが重なっています。そういった場を楽しみたい気持ちだけがくすぶっています。子どもにも体験させてやりたいです。金銭的時間的余裕がほしいです。もっと美術館やなんやらが活性化しますようにと切に祈ります。貧乏になると切り捨てざるを得ないのが一般庶民にとっての文化ですから(40代地方在住多動児持ち)
最後に、実際に美術館に通った経験のある子供の変化や成長に関する体験談をお届けしたい。こうした声から、美術館が持つ公共的な役割や人の成長への貢献について改めて考えることができるのではないだろうか。
3歳頃から親の趣味にずっと付き合わせて今年で10歳になりますが、今では自分なりに楽しめるようになりました。スーベニアショップであーとのマグネットを買って帰るのが楽しみのようです(匿名)
幼稚園の頃から子供を美術館に連れて行っています。幼稚園児でも、『この作品いいね』『きれいだね』といった感想の共有もできます。現在は小学校高学年ですが、興味を持ちそうな展示があるときは誘って、あれこれ感想を言い合いながら一緒に楽しんでくれます。盛り上がると2時間近くいることもあります。子供と楽しみながら文化芸術に触れられる場の一つとして、美術館という存在があると思っています(匿名)
現在小2の子供は美術館が大好きです。この年齢になるとあまり苦労がなくなりますが、小さな頃はなかなかゆったりと鑑賞できませんでした。私自身、子供の頃から美術館へ母と行っていて、今も心に残っているので、子供の記憶にもずっと残っていてほしいと思います。以前はTABで調べてギャラリー巡りをしていたので、そういった楽しみ方もしていきたいです(AN)
私は未就学児の頃から母にたくさん美術館に連れて行ってもらいました。覚えてないことも多いですが、美術館を特別なところだと思わず生活の中の一部と感じられるようになりました。是非これからのお子さんにもそういった体験があればいいなと思います(すずき)
幼い頃に父に連れられて美術館へ行った経験はかけがえのないものとなっております。数を見ていくうちに、幼いながらも好きな作家に出会えました。小さい子が広い会場で飽きずに鑑賞できることは難しい場合もありますが、一時期のことと温かく見守っていただけたらと思います。動物がいたら教えてね、好きな色見つけたら教えて、この前見たのと似てるのどれかな、この部屋で一番どれが好き、などと話しかけながら、子供と美術館に通えたことは楽しいだけでなく、自分を取り戻す時間にもなりました。佐伯祐三展に行かないと、ゴッホが来るね、学校の美術鑑賞で川瀬巴水の版画を見たけれど、ほとんど通り過ぎて全然ゆっくり見られなかったから、もう一度連れて行って…などと、小学生になってからも親子で豊かな時間を過ごせています(進藤裕美)
美術館や博物館などの公共施設は公共の概念に基づき、年齢や属性を問わずあらゆる人々のために存在している。そのことを念頭に置いたうえで、子供や親子連れ、また大人だけでの来館者など、すべての人が美術館を訪れる際にいくつかの心がけをすることや、美術館による取り組みの工夫によって、それぞれの心地よい空間を作ることができるのではないだろうか。
また、子供にとって鑑賞しやすい環境を作ることは、子供だけでなくたとえば車椅子ユーザーや日本語を母語としない人など、ほかの人々の鑑賞しやすさにもつながるはずだ。
未来の来館者である子供たちの存在は、美術館の未来そのものでもある。いま一度美術館で勤務する人々だけではなく、来館者もそれぞれの視点から美術館の役割を考えながら、ともにこれからの美術館を作っていくことが必要だろう。
*Tokyo Art Beatでは、「子連れで行きたい」全国の展覧会、イベント情報を随時更新中。おでかけやアート鑑賞の参考にしてほしい。
犬犬
X(旧Twitter)の育児漫画アカウント(@inu_eat_inu)でほぼ毎日育児マンガを更新中。書き下ろしなどを加えた書籍『2コマでわかる! 楽しくてヤバい育児』『2コマでわかる! 超楽しくてヤバい育児』(ともにKADOKAWA、2022)を刊行。そのほかの作品に『深海魚のアンコさん』(Comicメテオ)など。