9月16日〜10月1日まで、東京・下北沢の街を舞台に、「月」をテーマにしたアートフェスティバル「ムーンアートナイト下北沢 2023」が開催される。
初めて開催された昨年は約32万人が来場し、ルーク・ジェラム(Luke Jerram)の巨大な月の作品がSNSでも話題を集めるなど好評を博したが、今年はさらにパワーアップ。作品展示のほか、地域のコミュニティ醸成を目指し、様々なイベントやワークショップも開催される。主催は下北沢商店連合会、小田急電鉄株式会社、スタートバーン株式会社。
ここでは開幕に先駆けて行われた内覧会の様子をレポート。あいにくの雨となったが、雲で隠れてしまった月に代わって、アートを通した特別な「お月見」になった。
まずは本フェスを象徴する存在、ルーク・ジェラム(Luke Jerram)《Museum of the Moon》。昨年と同様、下北沢駅からほど近い下北線路街 空き地に巨大な月が登場する。
少し離れた場所から見ると街並みに月が浮かぶ姿は幻想的で、大人も子供もワクワクすること間違いなし。近付いて真下から眺めても大迫力だ。
⚫︎作品コンセプト
月は人類の歴史が始まって以来、いち惑星という存在であるだけでなく、宗教的象徴、タイムキーパー・カレンダー・夜間航行の補助など様々な役割を担っています。Museum of the Moonの月のインスタレーションは、世界各地の観客が持つ月に対する信念や理解と呼応し、新たな月の解釈やインスピレーションを与えます。(公式サイト)
*会期中無休 15:00〜21:00
可愛いくてインパクト大なウサギは、アマンダ・パーラー(Amanda Parer)による《Intrude》。本作は去年も展示され子供たちに大人気のスポットとなっていたが、今年は場所を変えBONUS TRACKとカトリック世田谷教会にて屋外展示される。最長14mの迫力あるサイズのウサギも登場。
アマンダ・パーラーは本作の隠れたコンセプトについてこう語る。
「(作家の出身地である)オーストラリアは白人の入植時に持ち込まれた3匹のウサギが増殖し、現在では手に負えない状況になっている。このウサギを模った作品は人間の誤った管理状況を表現し、サステナビリティや環境に関する深いメッセージが込められている。ただ、こうした意味を知らなくても、この可愛さを純粋に楽しんでほしい」
*会期中無休 15:00〜21:00
2020年にオープンしたBONUS TRACKは下北沢駅から徒歩10分ほど、世田谷代田駅との中間に位置する複合的スペース。本屋B&Bや、飲食店なども軒を連ねているので腹ごしらえをしながら散策するのもおすすめ。一部店舗ではコラボメニューも用意されているのでチェックしてほしい。
今回は下北沢のお隣の駅である東北沢駅も展示の舞台になる。普段は立ち入ることのできない駅屋上を限定公開し、鬼頭健吾の《Lines》が登場。カラフルな棒が景色のなかに色とリズムを生み出し、そのあいだを人々が歩くことで線と風景とが響き合う。
*会期中無休 15:00〜21:00 入場にはNFTチケット(500円)が必要
「この屋上に初めて来たとき、抜け感のある景色がいいなと思った。向こうには新宿の景色も見える。高いところから見下ろすのではなく、前に抜けていく感じがある」と、この場所の印象について語る鬼頭。
「人がこの作品の中に入ることで、中にいる人も、周囲の人にとっても作品の見え方が変わる。そうした変化を楽しんでほしい」。
下北沢駅から徒歩5分ほどの下北沢アーツでは、天野雛子 「how do you feel ?」が開催。大胆な色遣いと力強い筆致が魅力の新進気鋭のペインターの個展だ。
*9月15日〜10月1日 13:00〜19:00 休:月火水
アート展示の周り方としては、以下が歩きやすそうだ。
①南から北上するルート:【下北沢駅か世田谷代田駅から出発】→BONUS TRACK(アマンダ・パーラー)→下北線路街 空き地(ルーク・ジェラム)→下北沢アーツ(天野雛子)→カトリック世田谷教会(アマンダ・パーラー)→東北沢駅屋上(鬼頭健吾)
②下北沢駅から北上、その後南下ルート:下北線路街 空き地(ルーク・ジェラム)→下北沢アーツ(天野雛子)→カトリック世田谷教会(アマンダ・パーラー)→東北沢駅屋上(鬼頭健吾)→【東北沢駅〜世田谷代田駅は電車に乗ってもよし】→BONUS TRACK(アマンダ・パーラー)
本アートフェスは、デジタル×リアルの両方で楽しめることも大きな特徴だ。
近年開発によって新たな風景が生まれたシモキタ周辺。下北線路街やミカン下北といった新しいエリアと、劇場「ザ・スズナリ」など昔からこの地に根ざしてきた施設などを舞台に、NFTスタンプラリーが実施される。ここでは人気アバター「Metaani(メタアニ)」のオリジナルNFTが登場。ウェブアプリ「FUN FAN NFT」を利用してスタンプラリーに参加し、QRコードを読み込むことで、イベント限定のNFT付きデジタルアートをゲットできる。
参加にはチケット(500円)購入が必要となるので、詳細は公式サイトを確認してほしい。
また昨年のムーンアートナイト下北沢でもスタンプラリーが実施されていたが、そのときに1つでもNFTを獲得した人には、無料でNFTチケットが配布される。
スタートバーン株式会社代表の施井泰平は「テクノロジー本来の意味を楽しめる」と意気込みを語る。
「テクノロジーによって、何かを変えていきたいと考えている。たとえばNFTスタンプラリーのような試みは、かつてのアートフェスティバルにはなかった、テクノロジーが可能にする新しい楽しみ方。訪れた人がアートを所有したり、アートを“自分ごと”としていくような体験をサポートしたい」
NFTと聞くと少しハードルが高く感じられる人にとっても、気軽に最新テクノロジーとアートが楽しめることも本イベントの魅力だ。
シモキタの街に根差した施設・店舗による特別イベント・ワークショップの実施や、約50のコラボ企画も展開。限定メニューの提供を行う飲食店もある。
アートや食、カルチャーなどを通して、下北沢という街の魅力を存分に味わえる「ムーンアートナイト下北沢2023」。都市部の再開発という視点から改めてこのエリアを観察するのも面白いし、活気ある商店や文化施設からは様々なエネルギーがもらえるはずだ。
散策しながら、自分ならではの「中秋の名月」を楽しんでみてはいかがだろうか。
*Tokyo Art Beatを運営する株式会社アートビートは、スタートバーン株式会社のグループ会社です。
福島夏子(編集部)
福島夏子(編集部)