公開日:2022年2月26日

ボナールの新収蔵作品に注目。東京国立近代美術館の今期コレクション展は3月開催へ

戦後日本の絵画とマンガへの接近を描いた小特集も合わせて開催。

ピエール・ボナール プロヴァンス風景 1932 東京国立近代美術館蔵

1万3000点を超える充実のコレクションで知られる東京国立近代美術館。3月18日〜5月8日に開催される今期の「MOMATコレクション」展では、新収蔵したピエール・ボナール《プロヴァンス風景》(1932)が特別展示される。

ピエール・ボナール プロヴァンス風景 1932 東京国立近代美術館蔵

ピエール・ボナール(1867-1947)はフランスの画家。19世紀後半はパリで活動した芸術家集団「ナビ派」に属しており、日本絵画へも強い関心を持っていた。20世紀に入ると、前衛の運動には参加せず、個人での制作を続ける。新収蔵の《プロヴァンス風景》(1932)は、そんなキャリア後期を象徴する作品だ。黄色や紫を好んだというボナールの独特な色彩感覚や抽象度の高さが際立つ、多様な筆致ときらめくような画面が特徴だ。

ボナールの残した「絵画、すなわち視神経の冒険」という言葉の真意を感じ取れるであろう同作は、ぜひ会場で見てみたい。

池田龍雄 怒りの海 1953 東京国立近代美術館蔵

同時開催される「白い漫画、黒い漫画」は、戦後日本の絵画とマンガとの関係に焦点が当てられる小特集。
戦後、社会や人間をダークかつ滑稽に描いた作品が増えたことで、マンガと急激に接近した絵画。「黒い漫画」とは、そんな一連の作品を瀧口修造が指した言葉だ。
本展では、岡本太郎や間所紗織などの50年代から70年代までの戯画的な美術作品と、久里洋二や真鍋博らの同時代のマンガ冊子、計50点以上の作品・資料が展示される。

間所紗織 女(B) 1955 東京国立近代美術館蔵
真鍋博漫画集 食民地ニッポン 1957 個人蔵

浅見悠吾

浅見悠吾

1999年、千葉県生まれ。2021〜23年、Tokyo Art Beat エディトリアルインターン。東京工業大学大学院社会・人間科学コース在籍(伊藤亜紗研究室)。フランス・パリ在住。