丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 外観 撮影:編集部
香川・丸亀市に、同市ゆかりの画家・猪熊弦一郎の全面的な協力のもとで1991年に開館した丸亀市猪熊弦一郎現代美術館。猪熊本人から寄贈を受けた約2万点の猪熊作品を常設展で紹介するとともに、現代美術を中心とした企画展を開催している。このたび記者発表会が行われ、2025年度の展覧会スケジュールが発表された。
猪熊弦一郎の画家としての画業にとどまらず、これまであまり知られてこなかったイサム・ノグチら著名なアーティストとの交流や、丹下健三、谷口吉郎といった建築家との協働、デザインの仕事などに焦点を当てる展覧会。70年にわたって創作を続けた猪熊は、戦前はパリ、戦後はニューヨークやハワイなど海外に拠点を置いて国際的に活動した。本展では、戦後の猪熊の絵画以外の活動に注目。「新制作派協会建築部」の設立や、三越包装紙「華ひらく」、JR上野駅壁画《自由》といった生活空間に美を提供した活動、さらにニューヨーク滞在中に日米文化交流において果たした役割、現在の「アート県かがわ」につながる文化的礎を築いたことなど、猪熊が国内外に遺した足跡をたどる。
大竹にとって、2013年の「大竹伸朗展 ニューニュー」以来12年ぶりの同館での個展開催となる本展では、1988年に宇和島のアトリエで始まってから断続的に制作されてきた《網膜》シリーズにフォーカス。大竹の絵画シリーズ《網膜》は、廃棄された露光テスト用のポラロイド・フィルムに残された光の痕跡をカンヴァスに拡大転写し、その表層にウレタン樹脂を塗布した作品で、大竹は本展のために新作の《網膜》を制作する。会場では、未公開作品や巨大な立体作品《網膜屋/記憶濾過小屋》(2014)なども展示し、大竹の現在地とこれからの展開を発信する。なお本展は、4月18日から開催される「瀬戸内国際芸術祭2025」の広域連携事業である「瀬戸芸美術館連携」プロジェクトに参加している。
カナダ出身のジャネット・カーディフは、世界各地で個展や国際展への参加を重ねる、現代を代表するアーティストのひとり。本展では、そのキャリアのなかでも重要な作品と位置付けられているサウンドインスタレーション《40声のモテット》が紹介される予定だ。
このほか丸亀市猪熊弦一郎現代美術館では新たな取り組みとして、2025年度から丸亀市に住むすべての小学3年生を美術館に招待するプログラムを開始する。バスやフェリーなどの交通費といった来館にかかる費用を美術館が負担し、子どもたちに豊かな美術館体験を提供する。地元の子供たちに小学3年生になったら同館を訪れることを楽しみにしてもらえるようなプログラムを目指しているという。