立松弘臣氏の貴重なフランス料理のメニューコレクションを核に、7名のアーティストたちの作品をgraf media gmがセンス良く”調理”した。今回40点を見る事ができる年代もののメニューは、一つ一つがとても凝っていて、メニューそのものが芸術品のよう。
たとえば、ロシア皇帝ニコライ2世歓迎晩餐会(1896年10月6日)、エリゼ宮でのチャールズ皇太子、ダイアナ妃の最初で最後の晩餐会(1988年11月7日)、今上天皇公式初訪仏記念晩餐会(1994年)など、歴史的・外交的に重要な会食のメニュー。高級感ある装丁に、食事のメニューとともに音楽プログラムも載っていて、その場に流れた優雅な雰囲気を想像させる魅力が詰まっている。
また、フランス貴族の豪華な結婚式午餐メニュー(1871年の)、モンゴルフィエ兄弟気球打ち上げ100周年記念特別メニュー(1883年・・・いったいどんな人々が招かれたのか)、パレットの形をしたローマ賞受賞会食会(1886年)のメニュー、考古学会の美食晩餐会など、様々な趣旨の会食の存在を知る事ができるのも興味深い。
これだけでもかなり想像力が掻き立てられるが、さらにそれらのメニューに触発されて制作されたアーティストたちの作品がいい匂いを放って待っている。
まずは、料理ユニットの南風食堂によるルーレットでメニューを選択。フランス的なモチーフ5つを配したカラフルなルーレットを回し、止まった色のメニューが本日の貴方(貴女)のメニューです。
ほしよりこは、1904年の都市図書館主催の食事メニューの表紙に描かれている男の子を主人公にしたストーリーを額縁に入れて。
シアター・プロダクツはヨーロッパの宮殿を思わせる重厚な生地による「着られる」晩餐会セッティングで、フランス貴族のディナーのテーブル気分を。
そしてBGMには、メニューに載っている音楽プログラムから再現された阿部海太郎による音楽をどうぞ。といった具合である。
まるでコース料理を楽しむように一つ一つの作品を味わっていくうちに、視覚、聴覚、触覚が満たされて、味覚と嗅覚がうずきだし、食欲が湧いてくるに違いない。料理もアートも、五感で楽しむものなのである。