「エッシャー 不思議のヒミツ」が、豊田市美術館で9月23日まで開催されている。
本展は、幾何学的な構成と厳密さを追求して、視覚芸術の本質に迫る作品を生みだしたマウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898~1972)の初期から晩年までの代表作を網羅した展覧会。学生時代に制作した作品にはじまり、「だまし絵」的な代表作はもちろんのこと、晩年に至るまでの約160点の作品をとおして、エッシャーの画業の全容を知ることができる。
幻視的イメージや錯視を用いた作品で独自の芸術世界を創造したエッシャー。幾何学、数学の世界だけではなく、奇想の天才として芸術的言語を幅広く駆使し、それらを融合させて魅力的な新しい道を切り開いた。彼は美術史における例外的な存在であり、幅広い層の人々の関心を惹きつけてやまない人物である。
テーマごとに6つの章で構成されている本展は、初期作品から始まる。「第1章 デビューとイタリア」「第2章 テセレーション(敷き詰め)」は、建築・装飾学校の卒業後に旅行し、滞在したイタリア各地の風景や自然を元にした作品や、1922年に訪れたスペイン・グラナダのアルハンブラ宮殿の装飾文様で得たインスピレーションをもとに作り上げたテセレーションの作品が紹介される。
反復や循環、螺旋構造、反射する面、幾何学的立体など、多くの事象を探究し、その成果を作品へと昇華させたエッシャー。本展の見どころのひとつに、作品の特徴を分かりやすく鑑賞することができるテーマ設定がある。「第3章 メタモルフォーゼ(変容)」「第4章 空間の構造」「第5章 幾何学的なパラドックス(逆説)」など、テーマごとに作品を展示することで、エッシャーが何に関心を抱き、何を目指そうとしたのか、明らかになる。
エッシャー作品の世界観を疑似体験することができる体験コーナーも用意されている。どのような原理で人は錯覚に陥るのか。鑑賞した後に、実際に体験することでより深くエッシャー作品を理解することができる。
そのほか、蔵書票、グリーティング・カード、挿絵など、依頼を受けて制作していた作品など、鑑賞する機会の少ない貴重な作品も展示されている。作品を見て、「不思議のヒミツ」を体感することで、深くエッシャーを理解できる展覧会に、ぜひ足を運びたい。