松本竣介 少女 1947 板に油彩 神奈川県立近代美術館蔵
明治の終わる頃に生まれ、日中戦争から太平洋戦争へと続く激動の時代を生きた松本竣介。西欧の古典絵画に影響を受けながらも新時代の絵画を求め、20年ほどの短い画歴のなかで多彩な展開を見せた松本の画業を辿る展覧会「生誕110年 松本竣介」が、神奈川県立近代美術館の鎌倉別館で、4月29日からスタートする。


生誕110年という節目の年に開催する同展では、二科展初入選となった初期の黒い輪郭線による《建物》、独自の筆致で静謐な都市風景を描いた《橋(東京駅裏)》、代表作《立てる像》、戦後に描かれた赤褐色の地色に粗い筆致が印象的な《少女》などの油彩と素描25点が展示される。



また、彼自身が発行した雑誌『雑記帳』と、そこに掲載された関連作家31人の挿画原画も紹介。創刊号から最終号までの14冊に掲載された挿画を担当したのは、靉光、福沢一郎、長谷川利行、難波田龍起、金煥基、三岸節子、寺田政明、鳥海青児、恩地孝四郎、里見勝蔵など31人。名だたる画家たちとつながりを持ち、掲載を実現した松本の編集者としての視点に触れることができるだろう。
さらに、街歩きの際につねに携えていたという小さな『スケッチ帖』の内容をデジタル映像で公開。早逝の画家が、戦前・戦後の都市をどのように見ていたかがわかるはずだ。

同展のほかに、同時期には1992年生まれの堀江栞の個展「【小企画】堀江栞 ー 触れえないものたちへ」も開催している。幼い頃から松本竣介に私淑してきたという若き画家からも、松本が遺したもの、絵を描くことを介して受け継がれる表現への思いを感じることができるかもしれない。


生誕110年松本竣介
【小企画】堀江栞—触れえないものたち
会場:神奈川県立近代美術館 鎌倉別館
会期:2022年4月29日〜5月29日
休館日:月
開館時間:9:30〜17:00時(入館は16:30まで)
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/annex