国立西洋美術館で「内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙」が6月11日〜8月25日まで開催される。
印刷技術のなかった中世ヨーロッパにおいて、人々の信仰を支え知の伝達を担う主要な媒体であった写本。羊や子牛などの動物の皮を薄く加工して作った紙にテキストを筆写し、膨大な時間と労力をかけて制作される写本は、華やかな彩飾が施され一級の美術作品へと昇華を遂げている例も見られる。
2015年に、筑波大学・茨城県立医療大学名誉教授の内藤裕史が、国立西洋美術館に写本零葉を中心とするコレクションを一括寄贈。その後2020年にかけて、内藤の友人の協力も得ながら、新たに26点を所蔵品に加えた。これを受けて、国立西洋美術館では、2019~20年度に三期にわたり開催した小企画展において内藤コレクションを紹介。しかし、コロナ禍のさなかでもあったため、小規模なものにとどまった。本展は、改めて内藤コレクションの作品の大多数を一堂に展示する初の大規模な写本展となる。
展示は、内藤コレクションを中心に、国内の大学図書館の所蔵品も若干数加えた約150点より構成。聖書や詩編集、時祷書、聖歌集など中世から近世初頭にかけて普及した写本の役割や装飾の特徴を見ていく。書物の機能と結びつき、文字と絵が一体となった彩飾芸術の美「中世の小宇宙」を堪能することができる。
会期中のイベントとして、写本の奥深い世界に触れることのできる講演会「書物の中の小宇宙-文字と彩飾の饗宴」「西洋中世写本の生産、流通、蒐集」や、トークコンサートも開催。詳細はウェブサイトをチェックしてほしい。国立西洋美術館初の大規模写本展に期待したい。