パリを拠点とする世界的人気ファッションブランド、メゾン マルジェラがシグネチャーハンドバッグ「5AC」を再解釈するハッキング プロジェクトを発表。4組の日本人アーティストが手掛けた作品は、10月3日からメゾン マルジェラ公式サイトにて公開されると同時に、同日より10月17日までメゾン マルジェラ オモテサンドウのストア内に展示される。
メゾン マルジェラの「5AC」は、ライニングという内側の要素を匿名化し、デザインや機能として第二の用途を見いだすメゾンのコード「アノニミティ・オブ・ザ・ライニング」 を特徴とするシグネチャーバッグ。2024年春夏「Co-Ed」コレクションにも適用された「ハッキング」は、このプロジェクトに「インフォーマル・フォーマリティ」のエレベートされたムードをもたらし、慣れ親しんだものからの脱却を讃えるものだという。
今回のコラボレーションは、グラフィックデザイナーの田中義久と彫刻家の飯田竜太によるアーティストデュオ Nerhol(ネルホル)、木版画に特化した作品を手掛ける大竹笙子、ドローイングを中心に様々な表現を手掛けるBIEN、そしてテキスタイルデザイナーとデザインスタジオから成るNUNO | we+の作品に焦点を当てている。
連続写真の積層した紙を彫刻することで知られるNerholが創り出したのは、キャンバスを用いてハッキングした「Canvas(Nusa)」。キャンバスを巡って日本文化をとらえ直したときに、麻の紙に立ち返るべきと考えたふたりは、貴重な大麻(おおあさ)から作られたキャンバスの表面を穴が開くほど擦り、削りとって、そこに牛の膠を塗り重ねた作品を発表。表面でキラキラ光る膠と、荒く織られたキャンバスを通して、特徴的な「5AC」のバッグの輪郭や素材が立ち現れてくる仕組みになっている。
日常で目にした情景を具現化する大竹は、木版画を主な作品としている。「HACKED PATCHED」では、頭のなかがハッキングされ出現したイメージが継ぎ接ぎされ増殖していく様子を表現。ひとつのアイテムのなかに異なるピースを融合させ、その機能やストーリーの記憶を呼び起こし新たな価値を見いだすメゾンのコード「メモリー・オブ」とも通ずる脳内パッチワークは、見る人の記憶をも誘起させる作品である。
アニメーションやストリートカルチャーに影響を受けた独自のドローイング表現を中心に、映像、彫刻、インストラクション、インスタレーションなど、複数のメディアで作品を制作するBIEN。今回は複数のMDF彫刻と「5AC」マイクロが用いられる「Visible observation for 5AC」を展示する。通常は“バッグ”として認識している「5AC」が、その名称を外してしまえば彫刻作品と同様に一義的なジャンルで分けられない、何か得体の知れない物であり、異物としてそこに再び現れることを表現している作品である。
日本国内で布づくりを行う須藤玲子率いるテキスタイルデザインスタジオNUNOと、林登志也と安藤北斗が設立したコンテンポラリーデザインスタジオwe+が2022年12月より始動した協働プロジェクト、NUNO | we+。彼らが手掛けた「回転するキューブ - Inverse Equation」は、四角い刺繍片がテキスタイルの一部となり、ゆらゆら動くNUNOの刺繍布「スイング四角」の制作工程を3つのキューブで表現する。本来、人目には触れないプロセスを主役に引き立て、「5AC」を包み込むことで、ベーシックなコードを反転させるメゾン マルジェラの哲学をトレースする。キューブは閉じられた空間でありながら、回転することで無限に広がる空間へと人々を誘う。
メゾン マルジェラが提唱する「ハッキング」。衣服やモチーフを、別のタイプの衣服やモチーフに作り変える、もしくはその本質を明らかにするという目的のためにそれを横取りする行為を指すという。ファッションとアートの融合から生まれるコラボレーション作品にぜひ注目したい。
詳細はぜひ公式サイトをチェックしてほしい。