私の原稿では毎回5つ星による評価をつけていきます。
白い☆が評価点。
7月7日に観た展覧会。
行った感想 ☆☆☆☆★
うちの彼女も絵描きなのだが、ふたりに共通しているのは赤ちゃんをテーマにしているのではないかということ。
(聞いたわけではないので確かではないが)
赤ちゃんというのは、オトコ、オンナ、あるいはその間にある性も含め、どこかに線引きされきらないXジェンダー性を持っている。
カテゴライズされる前の存在とでもいおうか。
また、内面的にも、清らかなのか残忍なのか、また現心境が心安らかなのか不安なのか見てわからぬ、unknownな存在。だから言い方を違えれば、彼の絵は、見るとき・見る人によって映し出されるものが違う。
そのとき自分が託すものが何かによってこの子が伝達してくれるメッセージもまた変わる、そんな内面鏡。
前回見たときはどちらかというとやや思いつめた感じ、ちょっぴりと悲しげな方に、感情の目盛りが振れていた。どこかレクイエムめいた、生者より死者を悼むような気配があった。
だが、今回はこわばりが取れて、逆にその目盛りは笑みの方に寄っていっている。
また、独りで閉じている、あるいはふたりの世界で完結しているといった、若干入っていきづらい外の世界に対する拒絶感を前は醸し出していたが、今回新たに画面に加わった花。
花がわずかに書き足されているだけで、ずいぶん違う。
並んだふたりのバックに、描かれた花の一房。それだけで彼らが彼らの世界だけで完結していない存在へと変わった。
赤ちゃんカワウソの絵には、サンゴの枝が描き添えられているが、僕は桃の節句(雛祭)に桃の小枝を手にする稚児の姿を思い浮かべ微笑ましくなった。追いかけるような格好をした彼も、きっと誰かとつながっている。
ギャラリー奥に掛けてあったアルマジロの絵はやや肩に力が入り、しゃちほこばった絵に見えたが、赤ちゃんカワウソ、それから三匹のコウモリ兄弟の絵の2枚は(注:どちらもそういうタイトルがついているのではなく僕が勝手につけた愛称にてあしからず)、前回個展から比べて、この作家の新たな世界が拓けていた。これまではどこか気難しい子だったが、ふっきれてもう一度「新しく生まれた」感じ。
受付デスクのところに掛かっている、半年前に描いた一枚と比べてみてもずいぶん違う。
にしても、赤ちゃんカワウソの立ち姿の感じが、あまりに親の後をついて歩くときのおちびのよちよちそのままなので、思わず「もしかして子どもできた?」と作家に尋ねてしまったが、それは違ったみたい。
今回は「誕生」というテーマを強く感じた展覧会でした。