婁正綱 無題 2015 八曲一隻屏風 水墨、金箔、銀箔、紙 個人蔵
書画家・婁正綱(ろうせいこう)の展覧会「薬師寺の婁正綱 ― 遊山翫水」が、奈良の薬師寺東院堂(国宝)にて4月24日に開幕した。会期は5月11日まで。
中国・黒竜江省に生まれた婁正綱は、幼い頃から父親に書画を学び、幼少期であった1970年代には中国書画界で突出した存在となった。1986年に来日して東京を拠点に活動したのち、1993年から2000年にかけてニューヨークを活動の場とした。近年は伊豆にアトリエを構え、制作を行っている。変化を続ける現代美術の有りようを目の当たりにし、伝統のみ拘泥しない、自身の内から湧き出る美的価値の表出を志している。

展覧会では、婁の屏風作品を公開。金箔や銀箔を用いた作品など、3点の作品が並ぶ。婁の制作は、しばしば自らの画室を囲む山や海などの自然の景色に触発されている。今回の作品は2015年の制作当時、芦ノ湖を臨む元箱根のアトリエで制作していた作家が見た光の移ろいや、無意識のうちに心に残ったものなどに影響を受けているという。



本展「薬師寺の婁正綱 ― 遊山翫水」の会場となる法相宗大本山 薬師寺東院堂は、奈良時代に建てられたお堂が消失し、鎌倉時代の1285年に再建された和様建築の建物。日本最古の禅堂として、国宝に指定されている。薬師寺は、1998年に「古都奈良の文化財」の構成資産のひとつとして、ユネスコ世界遺産に登録された。


国宝の禅堂を舞台に展開される、美しい仏像と婁の屏風作品の静かな共演を堪能してほしい。