鴻池朋子 Dream Hunting Grounds カービング壁画 秋田県立近代美術館 展示風景 2018 新田安紀芳氏蔵(アーツ前橋寄託) © Tomoko Konoike
絵画、彫刻、手芸、歌、映像など様々なメディアを用い、古来からの習俗や神秘的存在に着想を得る鴻池朋子の個展「みる誕生 鴻池朋子展」が高松市美術館で開催される。会期は2022年7月16日から9月4日。
今回の展覧会に際し、鴻池は「生まれたての体で世界と出会う驚き」を「みる誕生」と名付けたという。観客は眼だけではなく、手で看(み)る、鼻で診(み)る、耳で視(み)る、そして引力や呼吸で観(み)ることで、美術館という強固な建築と、そこから疎遠になってしまった自然界とに新たな通路を開く。
天井から自然光の降り注ぐ高さ10mの美術館エントランスホールでは、牛革をつぎはぎして制作した新作《皮トンビ》、展示室では鴻池が「動物の痕跡」としてとらえる《どうぶつの糞》の模型と「人間の痕跡」としての美術館収蔵作品を共存。また、美術館の内と外をつなぎ、高松市と海を隔てた地点に位置する大島とを結ぶ「インタータイダル・ゾーン(潮間帯)」を展覧会のために設置。同所では、ハンセン病患者・回復者が暮らす国立療養所 菊池恵楓園 絵画クラブ「金陽会」の作品や、若林奮の《緑の森の一角獣座 模型》、鴻池の手芸作品《物語るテーブルランナー》などが展示される。
エントランスホールの《皮トンビ》から始まる紐が会場全体のみちしるべとして巡らされ、それを伝いながら展覧会を周遊できるなど、旅のプロセスや連続性が強く意識された今展では、野糞についてのクロストークや筆談をダンスとしてとらえるイベントなど、ユニークな関連企画も充実。鴻池が示す世界の「みかた」に触れる絶好の機会だ。