和歌山県紀南/熊野を舞台に、歴史・文化を再度とらえ直すアート・プロジェクト「紀南アートウィーク」。9月20日〜29日の10日間にわたり、紀南アートウィーク2024「いごくたまる、またいごく」展が開催される。
本年のタイトルは、和歌山県紀南地方の方言「いごく(動く)」「たまる(集まる)」から、『動き、集まり、また動く』ことを意味している。紀南地域が誇る大博物学者・南方熊楠が研究していた粘菌は、ときには動物のように動き、ときには植物のように留まり(集まり)、ときには胞子となって新たな場所に向かい、その姿をダイナミックに変えながら環境に適応して生きている。
彼らが見せる、境界を越えて行き来する姿は「生か死か」「動物か植物か」といった白黒はっきりした二項対立ではなく、我々が無意識に引いている境界の不確かさや、相反するものの間を流れていく軽やかな在り方を教えてくれる。紀南アートウィーク2024では、均質化が進むこの世のなかで、粘菌たちが教えてくれる在り方のように、特定のある場所・ある視点・ある価値観などに留まらず柔軟に生きていくことを、アーティストの作品やイベント・トーク・ワークショップを通じて発見していく。
南方熊楠顕彰館、川久ミュージアム、南方熊楠記念館、アドベンチャーワールド、三段壁洞窟、屋外スペースなどで、約20作家の作品が展示される。
南方熊楠研究のためにオランダから2ヶ月間、紀南アート・レジデンスに参加中のヘアート・ムルのほか、近年世界で注目されるタイキ・サクピシット、チュオン・コン・トゥン、カニータ・ティスなどの東南アジアのアーティストが参加。 日本からは第15回光州ビエンナーレ日本パビリオンへの参加が発表された山内光枝、東京・銀座のポーラ ミュージアム アネックスで展覧会を開催した久保寛子、紀南にゆかりのある杵村直子、前田耕平やAWAYAなどが出展予定だ。
美術批評家の四方幸子をゲストに迎えたオープニングトークや、公園のような農園の設立を目指す「コモンズ農園プロジェクト」の参加型体験ワークショップ、庭師/小説家であるジル・クレマンのドキュメンタリー映画『動いている庭』の上映会など、多くの関連イベントも開催される。