「三島喜美代―未来への記憶」が、練馬区立美術館で、5月19日〜7月7日に開催される。日本の前衛美術の最前線で活躍してきた現代美術家・三島喜美代(1932〜)の東京の美術館で開催される、初の個展となる。過去の個展は、2023年秋に開催された岐阜県現代陶芸美術館での展覧会のみ。初期の油彩画や新聞、雑誌等をコラージュした前衛的な絵画から、陶にシルクスクリーンで印刷物を転写した多様な立体作品、大型インスタレーション、産業廃棄物を素材に取り込んだ近作など約90点の作品を通して、これまでの創作活動を振り返る。
見どころの《20世紀の記憶》(1984〜2013)は、三島の代表作にして最大規模のインスタレーション作品だ。ぎっしりと床に敷き詰められた大量の耐火レンガ・ブロックから成るこの作品は、床に敷き詰められた中古の耐火レンガは1万個を数え、表面には20世紀の100年間の新聞記事が転写されている。その圧倒的なスケールと、戦災とも情報洪水の果てともとれる廃墟のような光景には圧巻されるだろう。
大量消費社会や情報化社会へ厳しい視線を投げかけつつも、情報やゴミを異化作用を通して造形表現へと転化させた三島の作品群は、日々の暮らしの中から遊び心をもって生み出されてきた。三島が社会の現実を見つめながら、情報とゴミの問題をテーマに一貫して追い求めてきた作品世界の全貌に、本展を通してその魅力と実像に迫る。