大阪中之島美術館で「没後30年 木下佳通代」が、5月25日~8月18日に開催される。40年以上前に海外での個展を成功させた後、94年に55歳の若さで逝去した木下佳通代。本展では「存在とは何か」をテーマとして、生涯において1200点以上の作品を制作した木下の軌跡をたどる国内美術館初の個展であり、初期から晩年までの作品120点以上を一堂に展示する過去最大規模の個展となる。
京都市立美術大学(現京都市立芸術大学)で学び、美術教師として勤めたのち、1960年代末から本格的な作家活動を始めた木下。初期の写真を用いた作品が評価された後、関西、東京、海外と活動場所を広げ、81年にドイツのハイデルベルクで個展を成功させ、ヨーロッパでも評価されるようになった。
初期の70年代には、写真を用いてイメージと知覚、物質の関係を考察する作品を手がけたが、ハイデルベルク個展後の82年にこれまでの作風から離れて抽象画を描くようになる。力強いストロークの幅広い筆致や、描いた部分を拭き取るなど、新たな作風で期待されていたが、90年のがん宣告によって木下の活動は変化していく。
見どころである《86-CA323》(1986)は、幅550cm×高さ250cmの最大規模の作品。このたびの調査で明らかになったこの作品は、修復後、本展初公開。
約30年間の作家活動で制作されたとされる1200点以上の作品は、関西各地の美術館などにコレクションされており、注目を浴びる機会は少なかった。しかし、2015年に「来たるべき新しい世界のために:1968年から1979年における日本の写真と美術の実験」 展(ヒューストン美術館ほか)に出品されたことで、いま再び注目を浴び始めている。
初期の作品や代表作、病魔にむしばまれながらも「描きたい、描きたい、時間が欲しい」と制作を続けた木下の燃え尽きる命を思わせる絶筆に至る活動を、この目に焼き付けたい。