会場風景より、『漂流教室』グラフィックゾーン ©︎ 楳図かずお/小学館
「楳図かずお大美術展」が東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)で開催されている。会期は3月25日まで。キュレーターは窪田研二、展覧会アドバイザーは椹木野衣。


本展のメインを飾るのは、27年ぶりとなる新作「ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館」。意志を持った産業用ロボットをめぐるSFマンガ『わたしは真悟』(1982〜86)の続編となる本作は、アクリル絵画101点の連作という方式を採用。いままでのマンガ作品と同様、楳図独特の狂気を孕んだ筆使いが見られる。さらに個々の絵画の下に書かれた短い文章は、読みつなぐことで40年の時を超えた新たな真悟の物語を形成する。




展示冒頭に配されるのはエキソニモによる作品《回想回路》(2022)。平たく敷かれた大量のケーブルの上にモニターが設置された不気味なインスタレーションだ。インターネット上での活動開始以来、テクノロジーを用いて感覚を揺さぶるような作品を制作してきたエキソニモ。『わたしは真悟』のシーンが流れるインスタレーションは、作中の重要なシーンで登場する東京タワーを背負うように配置されている。エキソニモは本作においても、ネットワーク世界と実世界というふたつのメディアをハッキングしている。


冨安由真とのコラボレーションはライティングが漸次的に変わる暗室が舞台。壁面には着彩前の「ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館」オリジナル素描101点が、室内中央には冨安の作品《Shadowings》(2022)が展示される。空間全体のプロデュースも行う冨安が制作したのは、楳図の素描をインスピレーションに家具やオブジェを用いた小屋のような構造物。モノクロームな素描と空虚さを孕んだ構造物、パラレルなふたりの作家世界がひとつの閉じられた暗闇で交錯している。
人類の破滅をテーマとした長編SFマンガ『14歳』と対峙するのは鴻池朋子。『14歳』(1990〜95)や楳図との対談を通じて、作品の根底にあるイメージを探りながら制作したという今回のコラボレーションでは、「ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館」の素描へのリスペクトから生まれた《かずお14歳》(2022)や、鴻池が作中で印象深かった言葉を書き写した《左手のエチュード》(2022)のほか、作中ラストシーンで登場する芋虫を写した映像や登場人物の顔をモチーフとした振り子などを展示。表現手法を固定しない一連の作品によって、『14歳』のみならず、芸術家・楳図かずおの感性に迫ることを試みている。





楳図の略年年表やマンガ雑誌の展示があるほか、ショップでは限定グッズや楳図ワールドを表現したコラボメニューなども楽しめる。

