彫刻家の舟越桂さんが29日、肺がんのため72歳で死去した。
舟越さんは1951年岩手県生まれ。戦後日本を代表する彫刻家・舟越保武を父に持ち、その影響で幼少期より彫刻家を志した。75年東京造形大学彫刻科卒業後、77年東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。
1982年にギャラリー・オカベ(東京)で初個展を開催し、85年以降は西村画廊(東京)を中心に作品を発表。86年から文化庁芸術家在外研修員として1年間ロンドンに滞在し、88年の第43回ヴェネチア・ビエンナーレに植松奎二、戸谷成雄とともに参加。92年にドクメンタ、シドニー・ビエンナーレに出品するなど活躍の場を海外にも広げた。
クスノキを素材に大理石の目をはめ込んだ、内省的で静謐な半身像で知られる舟越。初期は日常性を感じさせる素朴な胸像、90年代〜2000年初頭は妖精や野獣、異形の人物像、2005年からは半人半獣・両性具有の「スフィンクス・シリーズ」を手がけた。
近年の美術館での主な個展に「舟越桂 私の中のスフィンクス」(兵庫県立美術館ほか3館、2015〜16)。芸術選奨文部科学大臣賞(2009)、毎日芸術賞受賞(2009)、紫綬褒章受章(2011)など数々の受賞歴がある。
天童荒太の小説『永遠の仔』をはじめ、複数の書籍の表紙にも作品が用いられている。