3月29日、肺がんのため72歳で死去した彫刻家の舟越桂。舟越が生前最後に準備していた展覧会「舟越桂 森へ行く日」が箱根の彫刻の森美術館 本館ギャラリーで開催される。会期は7月26日〜11月4日。
自然の中で人々と芸術家が交流する場として誕生した日本で初めての野外彫刻美術館である彫刻の森美術館。開館55周年を記念した展覧会にと2023年3月に舟越に依頼したことから本展の企画が始まり準備が進められてきた。本展は、最期までこの展覧会の実現を望み、励んだ作家本人の意思と、遺族の意向を尊重して開催される。
聖母子像や、性別を感じさせない静謐な空気をまとった人物像で多くの人を魅了してきた舟越。初期は日常性を感じさせる素朴な胸像、90年代〜2000年初頭は妖精や野獣、異形の人物像、2005年からは半人半獣・両性具有の「スフィンクス・シリーズ」を手がけた。
本展は、日々の創作活動が垣間見えるデッサンやメモ、舟越が実際の制作に使っていた手製の作業台やデッサン用の一本足 のイスなどが展示される展示室1「僕が気に入っている 」、人々が抱える孤独や矛盾、二面性にも目を向けた舟越の活動を振り返る展示室2「人間とは何か」。
そして東日本大震災がきっかけとなって制作された作品、「スフィンクス・シリーズ」が集まる展示室3「心象人物」、舟越が家族のために作ったたくさんのおもちゃが文章とともに掲載され、27年ぶりに増補新版される著書『おもちゃのいいわけ』がテーマの展示室4「『おもちゃのいいわけ』のための部屋」からなる。
人間とは何かを生涯問い続けた舟越の軌跡を辿りたい。