公開日:2010年9月13日

カール・ハイド展 “What’s going on in your Head when you’re Dancing?”

『音楽』を具現化したペインティング

イギリスの人気エレクトロニック・ミュージック・グループ、アンダーワールドのメンバーであり、クリエイティブ集団 tomatoの一員としても活動するカール・ハイド。彼の世界初となるソロ・ペインティング・エキシビションがラフォーレミュージアム原宿で9月15日まで開催される。

《Jump Through the Skyhole》
《Jump Through the Skyhole》

カール・ハイドは音楽活動と並行してペインティング制作を継続的に行い、これまでもアートイベントで作品を数回披露してきた。2007年には幕張メッセで開催されたエレクトロニック系の音楽イベント『OBLIVION BALL』で「ART JAM」と題したアートプログラムをアンダーワールドのもう一人のメンバー、リック・スミスや、tomatoのジョン・ワーウィッカー、サイモン・テイラー等と実施。全長45メートル、高さ7メートルという巨大なウォールペインティングを一夜がかりで完成させ、話題を呼んだ。

《Into The Light With A Storm In My Head》

今回の個展では2メートル以上に及ぶ大作を含め、約90点のペインティング作品を展示。ほかにも創作ノートや制作プロセスを収めた映像作品などが紹介されている。

会場に入ってすぐの壁には、展覧会タイトル『”What’s going on in your Head when you’re Dancing?”』……「踊っているあなたの頭の中では、いったい何が起こっているのか?」に対するカールのメッセージが。

会場内にはリック・スミスがこの展覧会のために作ったサウンドが流れており、本展の重要な要素のひとつとなっている。

展覧会初日、会場中央ではカール自身による公開ライブペインティングが行われた。

木製の小屋に青、白、黒のペイントで波のような、渦のようなラインを描くカール。自由に描いているようでいて、会場に流れるサウンドと呼応しているようでもあった。

筆を走らせるカールの腕や、線を描くためのステップは、まるで彼のライブパフォーマンスを観ているかのような感覚に観ている者を陥らせる。

ペイント缶のふちに筆を打ちつけ、余分についてしまったペイントをはらう音、線を描くチョークの音、耳を澄ませば聞こえてきそうなペイントの滴る音までもが、リックのサウンドに新たなリズムを刻んでいた。

その瞬間、会場に展示されていたカールのペインティング作品を理解した。

ライブパフォーマンスで得られる高揚感や喜びの感情。どっと押し寄せてくるリズムやメロディに対し、考えることなどせず、ただひたすら感じて、その流れに身をまかせたくなる。そういった感情や、形として残すことができない、触れることができない音楽そのものを具現化したのがカールのペインティングなのである。彼のペインティングからは、音の波動や空気感までもが伝わってきそうであった。

『”What’s going on in your Head when you’re Dancing?”』
言葉を超えて響くリズムのせいで、あなたは大胆になり、いやおうなく押し寄せてくる流れに身をまかせたいという欲望にかられる。(カール・ハイドの言葉より)

《Dancing in the Wind》
《Dancing in the Wind》

カールのペインティングとリックのサウンド。二人の異なるアプローチが融合し、ひょっとしたら新たなアンダーワールドを体感できる展覧会なのかもしれない。アートファンにはもちろん、音楽ファンにもぜひ観ていただきたい、音楽とアートのつながりをまさに体感することができる展覧会だ。

Miki Takagi

Miki Takagi

横浜生まれの横浜育ち。アートとは無縁の人生を送ってきたが、とある企業のイベントPRに携わった際、現代美術と運命的な出会いを果たす。すぐれた作品に出会うとき、眠っていた感覚や忘れていた感覚が呼び起こされる、あるいは今までに経験したことのない感覚に襲われ全身の毛孔が開くような、あの感じが好き。趣味は路地裏さんぽ。