葉山と鎌倉の2か所に拠点を持つ神奈川県立近代美術館が、2022年度の展覧会予定を発表した。
まず葉山館では、6月25日から10月10日の日程で「アレック・ソス Gathered Leaves」。アメリカの現代写真を牽引するアレック・ソスにとって、国内美術館での初の個展となる。ドキュメンタリー・スタイルの伝統を継承した独自の詩的な静謐さを特徴とするソスの作品を、初期から最新作までのアメリカを主題とする代表的な5つのシリーズで紹介。ちなみに同名の展覧会が国際巡回中だが、それとは異なる日本展独自のセレクションになるという。
10月22日から2023年1月22日には「マン・レイと女性たち」。絵画やオブジェ、映画などジャンルを超えて活躍したマン・レイがとりわけ関心を寄せた写真と、彼がカメラに収めた女性たちに光を当てる同展では、ダダやシュルレアリスム運動の記録、ポートレート、ファッション写真など約230点を紹介する。
そして2月4日から4月9日に開催されるのが「横尾龍彦 瞑想の彼方」。2015年に逝去した横尾龍彦は、日本とヨーロッパを行き来して活躍した画家。1965年にスイスで開催した初個展以後、聖書や神話に着想を得た幻想画により国内外での評価を確立。ドイツに本格的な拠点を設けた1980年以降は、ルドルフ・シュタイナーや禅の思想に影響を受け、制作に瞑想を取り入れ、書を思わせる抽象画を展開していった。日本の美術館での初めての回顧展として、国内のアトリエに遺された作品を中心に横尾の画業を展覧する。
同じ葉山館では、コレクション展として「内藤 礼 すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している 2022」を2022年10月22日から2023年1月22日まで、「ジョルジュ・ルオーの銅版画」を2月4日から4月9日に開催する。前者は、2009年に鎌倉館で開催された内藤の個展で発表・収蔵され、その後、鎌倉館が閉館する2016年まで常設作品となった《恩寵》の7年ぶりの展示となる。この間、作家は作品の在り方について検討を重ねてきたとのことで、新作も登場するひと味違ったコレクション展となるだろう。
いっぽう、鎌倉別館で9月17日から2023年1月9日に開催するのが「沖潤子 さらけでるもの」。刺繍を用いて独自の作品を制作する沖の美術館初個展となる。母が遺した糸をきっかけに独学で刺繍を始めた沖は、衣類やバッグなどに刺繍を施した初期を経て、近年では絵画や彫刻へも制作を展開している。同展では貴重な初期作品をはじめ、刺繍による代表作や新作などを通じて、創作の全貌を紹介する。
そしてコレクション展として「これってさわれるのかな?―彫刻に触れる展覧会―」が6月11日から9月4日、「美しい本―湯川書房の書物と版画」が2023年1月21日から年4月16日に開催。前者では、ふだんは触ることのできない彫刻作品に触れてみることで得られる、形、質感、温度から、新鮮な感覚を楽しむことができる(作品保護と感染症対策のため、美術館で用意する手袋を着用)。後者では、2008年に没した湯川成一が自身の出版社である湯川書房で手がけた書物の数々を紹介。岡田露愁、柄澤齊、染織家の望月通陽ら気鋭の美術家と協働した独創的な書物を見ることができる。