大巻伸嗣の新作 設置CGイメージ
東急グループが新宿歌舞伎町で開発を進める東急歌舞伎町タワー内に、新宿・歌舞伎町とゆかりのある作家をはじめとした26組のアーティストの作品が展示されることが発表された。同施設はホテルおよび映画館、劇場、ライブホールなどのエンターテインメント施設などからなる、地上48階・地下5階・塔屋1階、高さ約225メートルの超高層複合施設で、2023年4月14日に開業予定だ。
今回の先行発表では7組のアーティストが名前を連ねる。低層付近では「混交、時間、動、街・路上、土、活動的、日常」を、高層部では「透明、無時間、静、異次元、空、リラックス、非日常」をテーマとし、作品展示だけではなくアートツアーやホテルとの連動企画を実施することで、偶発的な都市文化体験、新たなアート体験価値を提供するとのこと。ここからは発表された作品とその内容を紹介する。
土やマスキングテープなどを素材に作品を描く淺井裕介は、地面の奥深く広がり、自然の営みを支える巨大な生命圏をイメージした新作を、同施設建設時に地下深くから採取した土や、新宿界隈で採取した土などを用いて制作する。
新宿「ホワイトハウス」を拠点に活動した前衛芸術グループ 「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」の主要メンバーであった篠原有司男。篠原は、自身の代名詞と言えるボクシング・ペインティングの手法で、日本の伝統的な絵画を思わせる色味を用いた伝統と革新の融合を大画面に描き出す。
半世紀以上にわたり新宿という街に魅せられ撮影してきた森山大道は、新宿の夜を撮影した作品集『新宿/Shinjuku』から作品を厳選。都市の欲望や身体性をあまねくとらえる森山の路上からの視点は、唯一無二の独創性を持つ。
Chim↑Pom from Smappa!Groupは、解体直前の「歌舞伎町ブックセンタービル」の全フロアを切り抜き、そのままに積み重ね、ビル内の残留物を間に挟み込んだ巨大彫刻作品を展示。壊す/建てる、という相反したプロセスによって「スクラップアンドビルド」を可視化する。
西野達はホテルのチェスト、新宿二丁目ゲイダンスクラブのキャッシャー台、新宿区役所で使用していたスチール棚など、新宿にゆかりのある家具などを使用することで江戸時代の宿場開設に始まった約320年の新宿の歴史を作品に取り込む。同作は、西野にとって希少な屋内の恒久設置作品となる。
時間の流れや、空気や重力も含めた空間をインスタレーション化する大巻伸嗣。45階に位置するレストランに、天井から吊られた金属の球体の中でLEDがゆっくりと点滅し、水紋や花などのモチーフが影絵のように周囲に映し出される大型作品を展示する。
青木野枝は大きな窓から豊かな光が差し込む46階ラウンジに新作彫刻を展示。同施設が建つ土地にかつてあった水脈や、それが光と融合するイメージを、鉄とガラスで表現する。
これらの作品のキュレーションは、愛知県美術館館長の拝戸雅彦、ギャラリー「ANOMALY 」が担当する。移り変わる街をどんな作品を彩るか楽しみに待ちたい。