サントリー美術館で「若冲と蕪村」展が開催されています。
伊藤若冲に、与謝蕪村。両者とも有名ですね。いや、名前は聞いたことあるけど日本画、水墨画って白黒だし、つまらない…。難しそうで、どう見たらいいかわからない…。そんな人にも見てほしい展覧会です!
偶然にも二人とも40歳頃に京都で制作に集中していたんですね。なんと歩いて数分程度の“ご近所さん”だったようです。そんな若冲と蕪村ですが、両者間の交流は確認されていません。筆まめな蕪村の手紙にも、他の画家による記述も「若冲と蕪村」の関係は記されていないそうです。同じ京都で、お互い芸術の道に身をおく者であったにもかかわらず、未だ直接的な交流が認められていないとは…なにか勘ぐってしまいますね。お互いライバル視していたのでしょうか?まだまだ謎に包まれています。
さて、今展覧会ですが、代表作はもちろん、新出作品も展示されます。
「図録で見たことある!」「これこれ!」という作品が多数並んでいますので、ファンの方にはたまらないのではないでしょうか。そのラインナップの多様さに、「こんな作品も制作していたのか」という驚きの連続です。 若冲と蕪村の表現の幅広さを堪能できる内容となっています。
例えば、こちらの写真。
大胆な筆使いの一方、細やかに描き込まれ、美しく彩色された花鳥図も若冲の代表作風です。(写真右・白梅錦鶏図 伊藤若冲筆 梅荘顕常賛 江戸時代 18世紀 MIHO MUSEUM蔵 展示期間: 〜4/13)枝に止まった鳥は、体の部位ごとに華麗に彩られています。それだけではなく、色付けられた上から、細やかに羽根模様が表現されています。部位によってその表現の仕方も違い、柔らかな羽根の凹凸までも感じられます。
このような細かな描き分けがあるかと思えば、まるっと明快に描かれた鶴の表現は若冲のお手の物。(写真中央・鶴図 伊藤若冲筆 双幅 寛政2年(1790) 個人蔵 展示期間:終了)薄墨でスルリと引かれた線は、大胆でありながら美しい曲線を描き、不思議な心地よさがあります。鶴はこの他にも複数展示されていますので、ぜひ探してみてください!
蕪村はどうでしょう。
一方は静寂の中に雪の積もる小さな音が、一方は激しい雨風の音が聞こえてきそうなこの二幅。
一見、荒々しく感じる作品ですが、筆先まで神経を使った跡がみてとれ、繊細なニュアンスが伝わってきます。風や光、雪の表現など「描かれていない」部分に魅せられました。
この二幅はさまざまなコントラストが描かれています。白いまま残されることで少しも重さを感じさせない雪と、かすれた薄墨で表されたの雨風。雪をまとってどっしりと上へ伸びる太い幹と、風に押され激しく揺れ動く細枝。2羽のカラスと、1羽の鷲。すっくと伸びた細い足と、しっかりと枝を挟み込んだ鋭い爪。空を見つめる、それぞれの目線の違いも面白いですね。
細やかに描きこまれた大作に感心したかと思えば、力の抜けたゆるりとした可愛らしい、まるで漫画のような表現が現れ、とても新鮮に感じます。大きな作品も多い今展覧会で、フッと息抜きできるような楽しい作品が並んでいます。
柔らかな文字とともに描かれた登場人物からは、和やかな雰囲気が漂い、見ているこちらまでなんともいえない穏やかな気持ちになります。旅を好んだ蕪村が描く人々の姿は、蕪村が実際に会った人がモチーフなのでしょうか。単純化された線ながら、いきいきとした表情を見せています。人々の息遣いや笑い声まで聞こえてきそうですね。
若冲と蕪村、同じ題材を描いたものも展示されます。違いを見比べるのも楽しいですね。さらに見逃せないのは、若冲や蕪村が、新らしい表現の拠り所としたであろう長崎派、あるいは中国・朝鮮の画家の作品です。共通するモチーフを描いているそれらと若冲・蕪村の作品を対比させながら鑑賞することができます。中にはそっくりに見える作品も。それらから二人が何を取り入れ、何を生み出したのか、思いを巡らすのもいいかもしれません。
5月10日(日)までの開催ですが、会期中は作品保護の為、展示替えが行われます。ほとんどの作品が入れ替わるそうです。各作品の展示期間をチェックして、お目当ての作品をお見逃しないよう!出品作品リストは公式ホームページから見ることができます。
六本木アートナイト開催やGWの時期などは、普段と違うスケジュールです。4月25日(土)は「六本木アートナイト」のため24時まで開館、また一般および大学・高校生は一律500円に!5月3日(日・祝)、4日(月・祝)は20時まで開館します。
一見関連性のなかった二人ですが、この展覧会に訪れれば、その印象は変わってします。二人の新たな表現への飽くなき追求心に圧倒されました。図録ではわからない、本物の魅力をぜひ堪能してください!
※写真は許可を得て撮影したものです。
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[TABインターン] 島田絢子: 愛媛県出身。日本の伝統意匠に惹かれ、大学で専攻した日本美術を中心に、現代アートも日々勉強中です。インターンをきっかけに、足を運ぶアートスペース拡大中。